経済総合
韓国最大の経済学術大会で猛批判にさらされた文政権の経済政策
「所得主導成長」で主要経済指標の伸び鈍化
経済学者約1500人が出席する韓国最大の経済学術大会で文在寅(ムン・ジェイン)政権の経済政策の柱である「所得主導成長」に対し、強い批判の声が上がった。文在寅政権発足以前の4年と発足後1年の国内総生産(GDP)、投資、雇用の伸びを比較した結果、むしろ指標が後退したためだ。賃金を引き上げて消費を刺激し、消費増加がさらに所得を増やすプラスの循環を期待した所得主導成長は効果が表れていない格好だ。
西江大経済学部のイ・ユンス教授、チェ・イン教授は14日、韓国経済学会の主管で成均館大で開かれた「2019年経済学共同学術大会」の第1次全体会議で、「新政府のマクロ経済効果の実証評価」という論文を発表した。所得主導成長を実証的に分析した結果が主要学会で発表されたのは初めてだ。
イ教授は「所得主導成長は賃金が上昇しても、投資、雇用、生産性が低下しなければ、効果があると言えるが、データ分析をしたところ、主要指標の伸びが鈍化していた」と指摘した。イ教授らは文在寅政権の発足前(2013年第1四半期-17年第2四半期)と発足後(17年第3四半期-18年第3四半期)の経済指標を比較分析した。その結果、現政権発足後、GDP成長率は0.13ポイント、投資伸び率は5・14ポイント、雇用伸び率は2.07ポイントそれぞれ低下した。
政府・与党は所得主導成長による効果の証拠として、昨年の民間消費が2.8%伸びた点を挙げているが、学識者は「錯視」だと指摘する。イ教授らの研究でも民間消費は1.14ポイント伸びていた。しかし、イ教授らは「国内消費が伸びたとは言えない」と断じた。輸入消費財を除けば、民間消費の成長率の伸びは0.46ポイントにすぎない。純粋な国内消費と言えるサービス分野の消費は減少したからだ。飲食・宿泊(-3.63ポイント)、芸術・スポーツ(-0.99ポイント)、教育・サービス(-0.96ポイント)などサービス業の大半で成長率が低下した。イ教授は「所得主導成長では国民の消費が再び国民の懐に戻ってくることが重要だ。民間消費の伸びはサービスなど国内消費の伸びによるものではないと推定され、内需増進効果はないと判断される」と指摘した。
また、所得主導成長が所得分配にもプラスの影響を与えていないとも分析した。雇用の伸びが臨時職労働者(-4.03ポイント)、日雇い労働者(-4.32ポイント)で大きく減少したからだ。昨年には最低賃金が16.4%も上昇したが、消費増につながらなかったのは、労働時間も同時に減少したためとみられる。イ教授は「最低賃金が増えても、労働時間が減少し、結局は所得減少につながるという懸念について検討が求められる」と述べた。
長期の成長見通しも明るくない。チェ教授は「設備投資の急激な減少、雇用減少、総要素生産性減少などで潜在成長率の阻害が懸念される」とした上で、「それでも所得主導成長が(政府の政策として)採択されたのは、政治家にとって、成長と分配を同時に追求するという『甘いアメ』のような存在だからだ」と指摘した。