昨年の大法院無罪判決以降、裁判所で現在900件審理中

「国防部主管代替服務も拒否」「家族は自分で守る」という主張も

 大検察庁(最高検察庁に相当)はこのほど、宗教的(良心的)兵役拒否事件に関する参考資料を各検察庁に送付していたことが分かった。宗教的兵役拒否者に対する捜査・裁判で、彼らが主張する「良心」が真実なのか虚偽なのか判断に迷った時に参考にするためだ。昨年の大法院(最高裁判所)における宗教的兵役拒否無罪判決以降、第一線の検事たちが「真の良心」による宗教的兵役拒否者なのかを判断するのに苦慮しているためだ。

 1月16日、清州地裁第432号法廷では、「宗教的兵役拒否者」4人の刑事裁判が行われた。この4人は宗教的信念を理由に入隊を拒否したとして、兵役法違反により起訴された。全員が宗教団体「エホバの証人」の信者だ。大法院は昨年11月、同じ理由で起訴された30代男性に無罪を言い渡した。そして、「誰が兵役を拒否できる真の宗教的・良心的拒否者かは検察が明らかにせよ」と述べた。現在、裁判所で審理されている宗教的兵役拒否裁判は約900件に達する。16日の清州地裁での裁判もその1つだった。

 法曹関係者によると、同日の裁判で検事は4人に「宗教活動(兵役拒否)により、もし韓国軍そのものがなくなったら、被告たちの宗教・良心の自由を守る国の基盤がなくなる可能性もある。それについて考えたことがあるか」と尋ねた。すると、1人が「私は国の基盤の消滅を望みます」と答えた。韓国という国や軍隊はなくなるべきだという趣旨の回答をしたのだ。裁判長も「国家消滅を望んでいるのか」と質問したが、この被告は「その通りだ」と答えたとのことだ。そして、「すべての人が私と同じ宗教を信じることはないだろう」とも言った。この被告1人がこうした宗教的な考えを持っているからと言って、それが韓国という国や軍隊の解体につながるはずはないとの意味だと解釈できる。この被告を除く3人は検事の質問に「そういうことは考えたことがなかった」と言いながらも、「私の家族に対する脅威には最善の防御する」と答えた。

 検事はまた、4人の被告に「国防部が主管する(兵役の)代替服務に応じる意向があるか」と尋ねた。すると、4人のうち2人は「国防部と兵務庁が関与する形の代替服務ならば拒否する」と答えた。あとの2人は「そういうことについて考えたことはない」と言いながらも、国防部が主導する代替服務に就くのは難しいという内容の回答をしたという。4人の判決公判は30日に行われる。

 もちろん、今回の清州地裁での審理は一部の事例だ。昨年大法院で無罪判決を受けた「エホバの証人」信者オ・スンホンさん(35)は報道機関とのインタビューで、「誠実に(代替)服務を務める」と答えた。しかし、裁判や捜査の過程では、軍の必要性そのものを否定し、政府が用意した代替服務もしないとする人もいる。国防部が昨年末、「36カ月間の刑務所合宿」という代替服務案を発表した時も、一部の宗教的兵役拒否者は「最悪だ」「福祉施設ではなく、なぜ刑務所なのか」という反応を示した。検察としては、「真の良心」による兵役拒否者かどうかを判断することが何よりも重要になっている。

 大法院は昨年、「被告が良心的兵役拒否を主張する場合、その良心が果たして深く確固としていて、真の物なのか、(検察は)審査しなければならない」と述べた。ところが、肝心の「真の良心」が具体的に何なのかは明言していない。「被告人の成長過程など、人生・生活の全般を調べるなどの方法で(真の)良心かどうかを間接的に証明できる」とだけ述べた。法曹関係者の間では「社会的影響が大きい宗教的兵役拒否について、大法院があまりにもあいまいな判決を下したため、第一線の捜査や地裁審理に混乱を来している」という声も上がっている。

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