コラム
【コラム】韓日の「天才棋士」育成法
韓国の囲碁界はここ数年間、二人の天才少女を見守ってきた。一人は2007年5月生まれのキム・ウンジさん(小6)だ。2015年にSBS放送英才発掘団で紹介されたウンジさんは、昨年1年で女子アマチュア最強戦など4大会で優勝した。世界女子囲碁界の第一人者になるという夢を果たすのに十分過ぎるほどの実力を見せ付けた。
もう一人は日本国籍の仲邑菫さんだ。2009年3月生まれで、キム・ウンジさんより1年9カ月若い。父と叔母が現役のプロ棋士、母が囲碁講師として活躍する囲碁一家で育ち、3歳の時から囲碁を始めた。娘を世界のトップスターに育てるためには、囲碁のレベルが高く、教育システムが整っている韓国で育てるのが有利と判断した父の意向に従って、7歳で韓国に留学した。
二人の少女は周囲の大きな関心の下に急成長を遂げた。ウンジさんは驚くべきことに士官学校クラスの研究生1組にまで上り詰めた。男女統合研究生108人のうち上位12人の隊列に名を連ねたわけだ。菫さんは最下位グループの8組からのスタートとなったが、この年齢で菫さんほどの実力を見せ付けたプロはかつて存在しなかった。周囲の人々は、二人のうちどちらの方が強いのかという質問をしなかった。研究生1組と8組の実力差は天と地ほどの差であるためだ。その代わり、菫さんには1年9カ月という財産があった。囲碁の英才教育の世界では、これほどの年齢差は棋力の差を相殺することができるほどの大きな財産(潜在力)となるのだ。
1月初め、第51回女子入段大会が始まった。菫さんは初出場を申し込んだものの、予選の対局をせずに出国した。日本棋院が「英才特別採用」制度を取り入れたとして帰国を勧めてきたため、これを受け入れたのだ。英才特別採用制度は、韓国、中国に押され、自国の将棋にも引けを取る日本の囲碁界が菫さんのために設けた突破口だった。2年間の韓国留学を終え、錦衣還郷した9歳の少女には、今年4月から日本史上最年少プロとして活動するという入段証が贈られた。
惜しくもキム・ウンジさんは、今年の入段大会で負け、4年連続で苦杯をなめる結果となった。「こんな子が天才であるはずがない」と疑問視する声が上がる恐れもあったが、最強棋士たちが集まり、息の詰まるような雰囲気の中で行われる入段大会では、こうしたことがよく起こる。入段大会の狭き門を突破できず、優秀な人材たちが囲碁をやめていくケースがひんぱんに起こったことで、韓国棋院は2012年に英才入段大会を取り入れたものの、女子の間ではこうした制度がいまだに確立されていない。
囲碁で成功するためには、入門も、入段も早い方がいい。多少粗削りでも、一度棋士の世界に入ってしまえば、学べるものは多いのだ。「高3」と「大学の新入生」のカリキュラムが全く違うのと同じだ。ウンジさんは再び「入段試験」の準備に取り掛かり、菫さんは本格的にプロ生活をスタートする。韓国と日本の天才に対する価値観と育成方法が大きく異なっているのが、ここ1週間で痛切に感じられた。これは単に囲碁界でのみ見られる現象なのだろうか。そうであることを願ってやまない。
イ・ホンリョル囲碁専門記者