社会総合
体育の授業が少ない韓国、教育現場では何が起きているのか
小学校2年生の息子を持つ37歳のある母親は、今年の学期初めに息子の時間割を見たところ、体育が週にたったの1時間しかなく驚いたという。国が定める教育課程には小学校1・2年生の体育について時間数が定められておらず、音楽・美術・体育を統合した「楽しい生活」と呼ばれる授業が週に6時間となっている。この6時間で体育をどれだけ行うかは教師の裁量だ。ただし小学校3年生からは体育が週2時間となる。
この母親は「息子から聞いたところによると、楽しい生活の時間には主に絵を描いたり何かを作ったりしているようだ」「学校で体育を十分に指導しないので、今後親たちはサッカーや縄跳びのような運動も塾で教えなければならなくなるのでは」と心配げな表情で語った。
子供が運動することの重要性に対する認識が高まる中、「学校の体育時間が不十分」との指摘が相次いでいる。この指摘に対して教育部(省に相当)は26日、児童・生徒の運動時間を確保するため「第2次学校体育振興基本計画」を発表した。しかしこれは従来の政策を焼き直したレベルにとどまっており、その実効性を疑問視する声が根強い。
韓国の義務教育における体育の時間は諸外国に比べて短い。経済協力開発機構(OECD)によると、2015年の時点で韓国における小学校全体の授業時間に占める体育の割合は7%で、これはフランスの13%、ドイツの11%、日本の10%に比べると非常に少ない。
教育部は26日「小学校1・2年生児童の運動する時間をもっと増やしたい」との考えを示し、同時に「楽しい生活」の時間に児童たちが楽しめる運動プログラムを開発することと、それを2020年までに普及させる意向も明らかにした。その例として「体を使ったれんぎょうの花の表現」などを挙げた。また小学校3・4年生の授業で行われている「生存水泳」も20年までに全学年で行う計画だ。また中学校で現在週2時間となっている「スポーツのクラブ活動」を1時間に減らし、その分を教師が行う体育の授業に振り替えることにした。
これに対して現場からは「実効性がない」との指摘が相次いでいる。理由はこれらほとんどの政策が学校に勧告するだけで、また生存水泳などはこれまでの焼き直しにすぎないからだ。
小学校低学年では運動の時間を増やすと言いつつ、教育課程は従来通りとなっているため、「結局は資料開発だけで終わるのでは」との懸念も相次いでいる。仁川大学体育教育科のパク・チョンジュン教授は「人の一生で運動が最も重要な時期となる小学校低学年の体育は統合教科の一つにされたし、教師たちも面倒との理由で体育を避ける傾向にある」とした上で「体育を国語や算数のような教科の一つとして指導を義務づけるべきだ」と指摘した。
学校が頭を痛める大気汚染問題への対策もない。教育部は昨年、学校や幼稚園に対し「PM2.5が一定レベル以上となった場合、屋外での活動を禁止する」との指針を下した。今年1-11月に全国の主要都市で1日平均のPM2.5濃度が基準を超えた日数を合計すると294日だった。ソウル市江東区の小学校に勤務するある教師は「最近になって児童たちの運動の機会は特に減っているが、それは大気汚染が深刻な日が増えて運動場に出られず、また高学年が使うため、低学年は体育館を使えないからだ」とした上で「このような実情を放置し、対策ばかり議論しても意味がない」と反発する。
体育の時間をより実りあるものとするため、外部の講師が行う「クラブ活動」を正規の授業に代替する方策についても疑問視する声が根強い。ソウル市内のある高校に勤務する体育教師は「以前はクラブ活動が奨励されていたが、最近は体育の先生がやらないと実効性がないと言われる。これでは前後のつじつまが全く合わない」と指摘した。