「ポイントに障害が発生した」(江陵駅指令)

「これは大変なことになった」(ソウル側指令)

 これは脱線事故の28分前に交わされた通信記録だ。ポイント故障に気づきながら、なぜ事故を防ぐことはできなかったのか--。

 韓国鉄道公社(KORAIL)が運行する韓国高速鉄道(KTX)が今月8日に江陵駅近くで脱線した事故は、線路上のポイント故障を指令に知らせるケーブルが誤って接続されていたことが根本的な原因だったことが明らかになってきた。

 ソウル・九老にあるKORAIL鉄道交通管制センターは同日午前7時7分、江陵駅付近のポイントに問題が生じたことを把握した。

 野党・自由韓国党の李憲昇(イ・ホンスン)国会議員は、ソウルと江陵駅の指令、事故列車の間で事故当時に交わされた通信内容を明らかにした。ポイント故障の発見から脱線事故発生までの時間は28分間だった。適正に対処していれば、事故を防ぐことができた。しかし、KORAIL管制センターはどのポイントが故障したのかを把握できず、事故列車も故障に気づくことはなかった。

■故障発見から事故まで28分あった

 記録によると、ソウル側の指令はポイントに問題があることを確認し、江陵駅の指令に「速やかに初期対応チームを送れ」と指示した。2分後、作業員がポイント故障を確認するために出発した。しかし、対応チームが向かった場所のポイントは正常で、付近にある別のポイントが故障を起こしていた。ポイントが故障を起こした場合、江陵駅に問題を知らせる信号が届くことになっている。しかし、2カ所のポイントの通信系統が誤って接続されており、指令は別のポイントが故障を起こしたと勘違いした。作業員はそれも知らずに正常なポイントの修理に出動したことになる。

 午前7時17分、ソウルの指令は「KTX806(事故列車)の(江陵)発車に支障はないか」と尋ねた。これに対し、江陵駅の指令は「発車可能だ。ポイントから発車可能との信号が届いている」と答えた。しかし、事故列車が通過したポイントは故障した状態だった。

 9分後の午前7時26分、事故列車の運転士は指令に出発進行を知らせ、指令も列車を出発させた。5分後の午前7時35分、事故列車の運転士から「江陵基地の分岐線を通過中、列車が脱線した」との通報があった。指令は驚き、「列車が脱線したのか」と問い返した。

■ケーブル接続ミスを1年放置

 韓国鉄道事故調査委員会によると、故障を起こしたポイントと近隣のポイントは昨年9月に設置された当時からケーブルが誤って接続されていたとみられる。調査委は▲昨年9月から2カ所のポイントのケーブルが誤って接続されていた▲江陵線のKTX開通以降、保線作業の過程でケーブルを誤って接続した--という2つの仮説を立て、調査を進めた。これまでの調査では、前者の可能性が高いという。

 だとすれば、KTX江陵線はポイントに問題があったままで、高速列車を1年間にわたり運転していたことになる。1年間も事故なしで運転できていたことにも疑問だ。現在推定されるのは、2カ所のポイントに対する「停止」「進行」信号が常に一致していたとみられることだ。専門家は「結果的に運がとんでもなく良かった」と指摘する。調査委もこの点について調べを進めている。調査委はまた、ポイントの故障原因について、部品の問題なのか、設置段階で施工業者がミスをしたのかについても調べている。

 1年間以上問題があったにもかかわらず、保線作業を行うKORAILが把握できていなかったとすれば、同社の責任が大きい。線路設備の維持保守細則によると、四半期に1回は機械室内の分電盤、端子の配線整備状態を確認することになっている。これについて、KORAILは「鉄道施設公団がポイントの所有権を完全に移管せず、適正な整備ができなかった」と説明した。元KORAIL幹部は「所有権がないために整備ができなかったというのは言い訳だ。KORAILと鉄道施設公団が責任を押し付け合い、管理に死角が生じたものだ」と批判した。

ホーム TOP