韓日交流
衣食・メイク…「韓国をまねしたい」という日本の若者たち
「メッチャかわいい!」「インスタに載せよう」
店の看板にはハングルで「ヨルム」(夏)と書かれている。東京・原宿の竹下通りの入り口にあるカフェの名前だ。赤い口紅とチークを塗った10代の女子学生2人がスマートフォンで写真を撮り続けていた。男性アイドルグループ・防弾少年団(BTS)の東京ドームコンサートが終わった翌日の15日、このカフェには同グループのヒット曲『FAKE LOVE』が鳴り響いていた。カフェの壁には「絶望の先には扉があり、あなたがいる」とハングルで書かれたネオンサインが輝いている。店員のオオハシユキナさん(20)は不慣れな韓国語で「韓国の雰囲気を感じたいという若い人たちが来ます」と説明してくれた。
「日本の若者の街」原宿が10-20代の韓流ファンの「インスタ映えスポット」として注目されている。看板にハングルが書かれているカフェをはじめ、韓国のコスメ・ブランド「ETUDE HOUSE」(エチュードハウス)、「STYLENANDA」(スタイルナンダ)、「innisfree」(イニスフリー)の原宿店、キャラクターグッズ店「LINE FRIENDS STORE」(ライン・フレンズ・ストア)の原宿店などで撮った写真を多数投稿する。ソーシャル・メディア上で、「#原宿」と日本語のハッシュタグを付けて検索すると、ハングルの看板を背景に撮った写真が次々とヒットする。「オルチャン・メイク」(韓国の女の子風のメイク)で有名なエチュードハウスは原宿付近だけで3店舗を抱えている。この日も防弾少年団のコンサート・グッズが入ったバッグとスーツケースを両手に持った若い女性たちが竹下通りを行き来していた。北海道から来た16歳の少女は「日本と韓国の間にはいろいろ問題があるけど、K-POPとは関係ない。BTSを応援し続ける」と語った。
■東京のど真ん中で「韓流ブーム」
20年前に日本の大衆文化に門戸を開いた結果、玄海灘を渡ったのは、日本の大衆文化よりも韓国の大衆文化コンテンツの方だった。韓流の「のろし」はこの時、上がったという見方もある。韓国コンテンツ振興院の黄仙恵(ファン・ソンヘ)日本ビジネスセンター長は「2002年のサッカー・ワールドカップ(W杯)大会韓日共催前、日本のメディアがW杯ムードを盛り上げ、NHKがドラマ『冬のソナタ』を放送したことで韓流ブームが始まった」と話す。
日本のメディアは、韓流ブームを3つの段階に分けて考えている。第1次ブームはヨン様(ペ・ヨンジュン)をはじめとする「韓国ドラマブーム」で、第2次ブームは2011年の少女時代・KARA・東方神起など「K-POPアイドルブーム」だ。しかし、12年8月に李明博(イ・ミョンバク)大統領が独島に上陸して以降、日本のテレビ局からは韓国ドラマやK-POPアイドルがほとんど見られなくなった。そして今は「第3次韓流ブーム」と呼ばれている。ソーシャル・メディアを通じて10-20代を中心に、15年から広がり始めた。動画投稿・共有サイト「ユーチューブ」を通じて日本でファン層を広げた女性アイドルグループTWICEはテレビ出演も果たした。昨年に引き続き今年も1年を締めくくるNHKの音楽番組『紅白歌合戦』に出演する。
■日本の10代にとって韓国は「パステルピンク」
第3次韓流ブームは、韓国のスタイルを「オシャレだからまねしたい」と受け入れるところまで進んでいる。ローティーン向けファッション誌「nicola」(ニコラ)は今年11月号と12月号の表紙で「韓国スタイル」を打ち出した。付録は「韓国の人気ブランド化粧品」。韓国コスメの日本輸出額は2017年に2億2600万ドル(約255億円)で、前年より23%増えた。
元祖コリアンタウンの新大久保から始まった「チーズタッカルビ」や「チーズホットドッグ」は今や日本全国で最も人気のある韓国料理となった。「チーズタッカルビ」は日本最大のレシピサイト「クックパット」が選定した「2017年食品トレンド大賞」に選ばれた。新大久保では最近、ホットドッグを手に写真を撮ったり、韓国アイドルのダンスをしたりする10代の若者たちで込み合っている。「STYLENANDA」のピンクのインテリアを模した店やカフェもあちこちにできた。10代の若者たちのソーシャル・メディア・アカウントには「韓国人になりたい」というハッシュタグを付けたインスタグラムだけで約1万7000件に達する。毎日新聞は「国籍を変えるということではなく、韓国のスタイルをまねたいという心理だ」と報じた。黄仙恵センター長は「日本の10代にとって、韓国は『ヨン様』ではなく『パステルピンク』のイメージ。子どものころに韓国文化が好きだったという記憶は一生、影響を与える」と語った。
防弾少年団の「Tシャツ問題」の渦中でも、第3次韓流ブームは消えることがなさそうだ。韓国大衆文化評論家の古家正亨氏は「お互いの国の文化を楽しむ韓日の若者は、両国の建設的な関係にも大きく貢献するだろう」と言った。駐日韓国文化院の黄星雲(ファン・ソンウン)院長は「韓国は年800万人も日本を訪れる重要な顧客なので、政治的な確執に関係なく、文化交流は引き続き発展していくと思われる」と語った。