韓日関係
「慰安婦・独島」めぐり韓日が正面衝突、互いに外交官呼び抗議
韓国と日本は21日、それぞれ相手国の外交官を呼び出して抗議するという「正面衝突」を起こした。先に反発したのは日本だ。韓国政府が、2015年の韓日慰安婦合意に基づき設立された慰安婦被害者支援のための「和解・癒やし財団」を解散すると発表すると、日本政府は即座に反発し、同日午前に李洙勲(イ・スフン)駐日韓国大使を外務省に呼び出して抗議した。一方の韓国政府は、日本の国会議員らが東京で開催した集会で独島(日本名:竹島)の領有権を主張したことについて、同日午後に在韓日本大使館の水嶋光一総括公使を呼んで抗議した。
韓国外交部(省に相当)の当局者は、韓日慰安婦合意と独島の領有権という別々の事案に関する問題が偶然同じ日に発生しただけだと話したが、韓日両国が同じ日に互いの外交官を呼び出して抗議するという事態は極めて異例だ。
■日本、「和解・癒やし財団」解散に反発
韓国政府は21日、「和解・癒やし財団」の解散を正式に発表した。韓国女性家族部(省に相当)は「15年の韓日慰安婦合意は、被害者である慰安婦のおばあさんたちの意見が反映されないまま推進された」として「被害者中心主義の原則に基づいて慰安婦のおばあさんたちの意見を取りまとめた結果を基に、財団解散の手続きに着手する」と発表した。
これを受けて日本は即座に反発。安倍晋三首相は同日「国際約束が守られないのであれば、国と国との関係が成り立たなくなる」として「韓国には国際社会の一員として責任ある対応を望みたい」と反発した。日本の外務省の秋葉剛男事務次官は、李洙勲駐日大使を外務省に呼んで抗議した。
「和解・癒やし財団」は15年12月、韓日慰安婦合意に基づいて日本政府が拠出した10億円によって翌年7月に設立された。財団はこの10億円で慰安婦被害者34人と死亡した慰安婦被害者の遺族らに約44億ウォン(約4億4000万円)を現金で支給した。しかし文在寅(ムン・ジェイン)政権発足後、政府が韓日慰安婦合意の検証・見直しを進めたため、財団の業務は事実上ストップしていた。韓国外交部は今年初め、日本政府の拠出した10億円を韓国政府の予算で充当すると発表した。しかし、国家間の合意を自ら破棄するのは外交的に好ましくないという点を意識し「合意破棄」や「再交渉」は求めなかった。
合意の破棄・履行のいずれにも当たらない結論を出した上で、韓国政府は日本政府の拠出した10億円を充当するために、今年7月に予備費で103億ウォン(約10億円)の予算を編成した。一部市民団体はこの10億円について「日本に返還せよ」と主張している。しかし日本政府がこれを承諾する可能性は極めて低い。女性家族部の関係者は、財団を完全に清算するには半年から1年かかるとして、この期間に10億円の扱いについて日本と協議する方針を示した。
■韓国、日本の独島領有権主張に抗議
一方、日本の超党派議員でつくる「日本の領土を守るために行動する議員連盟」は同日、島根県民会議と共同で、国会議事堂近くの憲政記念館で独島の領有権を主張する集会を開いた。集会には左藤章内閣府副大臣も出席した。
韓国政府はこれに対し「わが政府の度重なる警告にもかかわらず、日本の一部政治家が明白にわが領土である独島に対する荒唐無稽な主張をやめず、『竹島の領土問題の早期解決を求める東京集会』を開催したことに対し、強く抗議するとともに、行事の即時廃止を要求する」とする報道官論評を発表した。その上で在韓日本大使館の水嶋総括公使を呼んで抗議した。
韓日は表面的には激しい正面衝突を繰り広げているが、水面下では最悪の状況を回避するために努力しているとの見方もある。日本政府はこの日、和解・癒やし財団の解散について「合意破棄」とは見なさなかった。日本政府の菅義偉官房長官は記者会見で「引き続き韓国政府に粘り強く合意履行を働き掛けていく」と述べた。東京のある消息筋は「安倍内閣は、韓日関係がこれ以上悪化することを望んでいないため、慰安婦合意が破棄されるという状況はできる限り避けたがっている」と話した。韓国政府も同日「15年の韓日慰安婦合意が韓日間の公式な合意である点を勘案し、破棄や再交渉を求めないという立場に変わりはない」と明らかにした。