コラム
【コラム】文在寅政権の対日「職務放棄」外交
徴用工への賠償を命じる韓国大法院(最高裁に相当)の判決が出た後、このところ日本メディアに最も多く登場する政治家は河野太郎外相だ。普段から深刻そうな顔をしているが、その顔を一段とこわばらせ、機会があるたび韓国に向けて高圧的な言辞を連発している。少し前には、「関係が良い」と言っていた康京和(カン・ギョンファ)外相との電話の内容まで公開した。韓国の康外相が、事態解決のため「互いに知恵を探ろう」と言ったのに対し、河野外相は「この問題は100パーセント韓国に責任がある」と正面から反論したことを明らかにした。
自分の選挙区に当たる神奈川県では、街頭演説で「(1965年)当時の韓国の国家予算が3億ドルだったころ、日本は(請求権協定に基づき)5億ドルを一括して支払った」と声を高めた。韓国が貧しかったころを想起させる発言で、侮辱的に聞こえた。戦争中であっても交渉を通して問題を解決すべき外交責任者がこういう姿勢で出てくるほど、雰囲気は良くなかった。
賠償判決について「納得できない」という日本人は69%に達するというNHKの世論調査が出る中で、在日韓国人はまるで罪人のように緊張している。木宮正史・東京大学教授の分析通り、韓国は今回の判決を両国関係の一部分と見なしている。だが日本は両国間の全てが懸かったものと見ている-という視点の差が存在する。
大法院による今回の判決は、その結果が予告されていたも同然だった。2012年に賠償を命じる最初の判決が出た後、「司法取引」疑惑まで提起された状況の中、判決がひっくり返る可能性は1パーセントもなかった。ならば韓国政府は、日本の反発を鎮める対策を内部で綿密に準備すべきだった。歴代最高レベルの津波が押し寄せると予報されたら、対策を整えるのが常識ではないか。
韓国政府は、今ごろになって「対策を整備する」と慌てている有様だ。李洛淵(イ・ナクヨン)首相は「諸般の要素を総合的に考慮して、政府の対応案を整えていく」と語り、李洙勲(イ・スフン)駐日韓国大使は「(対応策が出るのに)少し時間がかかるのではないかと思う」と語った。「年内に対応策が出るなら幸い」という話に驚いた、と言う日本の外交官は1人や2人ではない。
韓国外交において、日本問題は引火性が最も高い素材だ。こうした深刻さにもかかわらず、昨年発足した文在寅(ムン・ジェイン)政権が強制徴用問題を解決したり対策を整えたりするため努力した痕跡は何ら見いだせない。逆に、朴槿恵(パク・クンへ)政権が事態の波紋を小さくするため大法院に行った説明を「司法取引」と見なし、職権を乱用したと追及した。
外交において重要なのは、先手を打った対応だ。日本はスピーカーを最大にして国際社会で有利な世論をつくり上げているのに、韓国は「後で対策を整備する」として黙ったまま、という格好だ。対日外交においては、政権の職権乱用だけが問題になるわけではない。職務の放棄は、より深刻な事態をもたらすかもしれない。