寄稿
【寄稿】科学分野でノーベル賞受賞者多数輩出、日本の秘訣は何か
【編集部注】本稿はノーベル医学・生理学賞受賞者発表前、本紙朝刊1日付記事です。
自然科学分野における日本人のノーベル賞受賞者は主に大学の研究者が多い。東京大学、京都大学、名古屋大学をはじめ、地方の国立大学も科学分野のノーベル賞受賞者を輩出している。筆者はこれまで40年にわたり名古屋大学や東京大学などで実験や研究を行い、非常に価値ある経験を積んできた。
つい先日、6人のノーベル賞受賞者を輩出した名古屋大学を再び訪問した。2001年にノーベル化学賞を受賞した野依良治教授の業績をたたえる野依記念物質科学研究館や坂田・平田ホールにはノーベル賞受賞者の紹介と共に、関連する研究ジャーナルなどが展示されている。
韓国とよく似たDNAと文化を持つ日本が科学分野で22人ものノーベル賞受賞者を輩出した秘訣(ひけつ)は何か。まず日本は第2次世界大戦以降、政府が一貫して実験施設に投資し、科学研究への支援を長期にわたり続けた。大学における基礎科学研究分野の野心に満ちたCoE(センター・オブ・エクセレンス、Center of Excellence)がその代表だ。師匠と弟子がノーベル賞を受賞したスーパーカミオカンデのような特殊な実験施設には、日本政府も巨額の投資を行っている。
研究を行う文化や環境にも独特なものがある。大学のキャンパスにある散策路を歩けば、昆虫や植物、鉱物を観察しながら独自の発想ができる。多くの研究者が定年退職後も研究を続け、職人のような気構えと徒弟式の研究室運営により、経験豊かな教授から若い研究者や大学院生へと続く縦のつながりもしっかりしている。大学で行われる実験は驚くほど基礎と原理を重視し、研究者も学生も外から見ているとばかに見えるほど研究に没頭している。東京大学本郷キャンパスには24時間営業のコンビニエンスストアが2カ所あり、いずれも繁盛しているが、それは週末や休日も研究者や学生が研究に没頭しているからだ。
韓国の大学における基礎科学分野の研究は、財政事情故に施設面、環境面、研究資源などどれも不十分だ。大学に対する実験施設の支援はもちろん、研究そのものへの支援にも国や政府としてもっと力を入れなければならない。研究者が実験室で存分に研究に没頭できるようにするには、政府による政策面での配慮、施設、研究文化造成に向けた支援が必要だ。ノーベル賞を受賞できない基礎科学研究不振の原因を今からでも韓国自らしっかりと見極め、中長期的な政策と対策を立てそれを実行に移していかねばならない。
キム・ギュハン梨花大学科学教育学科名誉教授