社説
【社説】外国メディアの笑い草になる韓国の国民年金
国民年金基金運用本部長が1年以上空席のままなのは、ソウルから遠く離れた地理的条件が理由だとする記事が米ウォール・ストリート・ジャーナルに掲載された。同紙は世界3位の規模の年金基金を運用する本部長が「豚の糞尿の臭い」に耐えなければならないという風刺画も添えた。国民年金公団がある全州市の全北核心都市では、今年に入り悪臭に関する苦情が155件寄せられた。全国民の老後を担う国民年金が外国メディアの笑い草にされているのだ。
「糞尿の臭い」というのは事実と違うか誇張だろう。しかし、問題の本質は国民年金基金運用本部がとんでもない場所にあることへの指摘だ。世界の10大年金基金はいずれも首都や金融ハブに拠点があるが、唯一韓国だけはソウルから約200キロメートル離れた田野にある。全州市内まで出るにも車で30分かかり、バスがなかなか来ないほど公共交通が不便だ。周辺の商店街は空き物件が多く、空き地にはごみが積み上がっている。こんな場所に全世界で635兆ウォン(約63兆円)を運用する基金運用本部があることは、外国メディアの目にも奇異に映ったはずだ。
昨年初め、基金運用本部がここに移転したところ、人材の離脱が続いているという。本部長はおろか、本部長の部下の室長クラスも相次いで辞め、8つの幹部ポストのうち3つが空席だ。職員数は定員が278人だが、現在は定員割れの246人だという。
国民年金公団の組織の一部が地方にあってもよかろう。しかし、基金運用本部だけは金融の中心地にあるべきだ。運用本部は200人余りの規模にすぎず、地方の発展とは事実上関係がない。ところが、「数百兆ウォンを運用している」という話が広がると、「選り抜きの存在だ」「何が何でも誘致しなければ」という圧力が高まった。結局地元の政治家が例外なき移転を推進し、大統領候補が公約までした。基金運用本部の200人が全州の地元経済にどんな貢献をするというのか。これほどのコメディーはない。国民年金の今年上半期の収益率は0.9%にとどまり、定期預金金利にも満たなかった。韓国株による収益率はマイナス5.3%まで落ち込んだ。それでも与党・共に民主党は他の政府系金融機関の地方移転も推進するという。金融から優秀な人材が離脱し、国益を害しても、地方の票さえ得られればよいのか。