「空港にこんなに大勢の方々が出迎えに来てくださり、幸せな6月を過ごさせていただきました。サポーターの皆さんに感謝します」

 サッカー・ワールドカップ(W杯)ロシア大会を終えて帰国し、インタビューを受けたソン・フンミン=トッテナム=の表情はずっと硬かった。グループリーグ敗退に対する無念さが残っているようだ。ソン・フンミンはさらに、「もっとうまくできたはずなのに、そうできなかったので悔しい。選手たちは経験が不足でとても緊張していた。ドイツ戦で希望が見えたが、それに甘んじないでさらに成長したい」と語った。

 29日午後、W杯ロシア大会を終えた韓国サッカー代表チームが仁川国際空港に到着した。新しい所属チームを探すためロシアから英国に直行した奇誠庸(キ・ソンヨン)を除く22人と申台竜(シン・テヨン)監督、金南一(キム・ナミル)コーチ、車ドゥリ(チャ・ドゥリ)コーチらスタッフが一緒に帰ってきた。

 その様子は4年前と同じようで違っていた。サポーターたちの心の中に怒りがなかったわけではないが、それよりも大きな歓迎の気持ちが選手を待っていた。選手たちが韓国に到着する数時間前から入国ゲートには韓国代表のユニホームを着たり、花束などのプレゼントを手にしたりしたサポーターたちが集まっていた。フェンス近くのエリアは報道陣が早々に陣取り、混雑していた。

 入国ゲートのドアが開き、選手たちが姿を現すと、空港は騒がしくなった。申台竜監督を筆頭にソン・フンミン、趙賢祐(チョ・ヒョンウ)=大邱FC=、文善敏(ムン・ソンミン)=仁川ユナイテッド=ら選手たちが登場すると、サポーター約500人が歓声を上げた。4年前に1分2敗という成績でグループリーグ敗退し、ブラジルから帰国した韓国代表たちは、空港で散々な目に遭った。一部のサポーターは「韓国のサッカーは死んだ」というプラカードを掲げていた。今年の韓国代表も決勝トーナメント進出に失敗したのは同じだが、グループリーグ第3節で世界最強ドイツに勝つなど、「有終の美を飾った」と受け止められている。こうしたムードの中で、サポーターたちも韓国代表たちの努力を認めて拍手を送った。

 不動のエース、ソン・フンミンのほかに大きな歓声が上がったのは、第1節から第3節までゴールを守ったGK趙賢祐だった。彼はこの日、米スポーツニュースサイト「ブリーチャー・レポート」が発表したW杯グループリーグのベストイレブンに、イングランドのハリー・ケイン、クロアチアのルカ・モドリッチらと共に唯一のアジア人選手として選ばれた。趙賢祐は別に用意されたインタビューの場で、「いつも夢見てきたW杯の舞台に出場できたことに感謝し、次のW杯でも期待される選手になりたい。Kリーグに戻っても頑張る」と語った。「人気を実感しているか」との質問には、「韓国に戻ったばかりなのでまだ実感はない。国民に愛されたいと言う気持ちと同じくらい、妻からもたくさんの愛をもらいたい」と答え、家族思いの一面を見せた。その上で、「これからもっと有名になって、ヨーロッパにも行くことができる選手になりたい」と言った。

 全体的には歓迎ムードだったが、4年前のことを思い起こさせる「卵投げ事件」もあった。選手たちが解散式のため、空港の一角に設けられた会場に2列になって立っていた時だった。1列目にいたソン・フンミンと申台竜監督の前に生卵が1個、投げつけられて割れた。ユニオンジャックがプリントされ、両端を結んでキャンディーのような形にしたクッションも飛んできた(韓国語で「アメをなめろ」は日本語の「くそ食らえ」と同じ意味)。その瞬間、ソン・フンミンの顔に戸惑いの表情が浮かんだ。申台竜監督も「これはいったいどういう事なんだ」という表情だった。その後のソン・フンミンのインタビューでも、彼の足の前に生卵が投げられた。 決勝トーナメント進出失敗に怒った一部の市民が投げたと思われる。これを見たほかのサポーターたちは「何をやっているんだ」と一喝し、こうした人々の行動は止まった。しかし、ソン・フンミンは複雑な胸の内を隠せなかった。ほかの選手たちも驚いた表情だった。

 これについて直接言及した選手はいなかったが、ドイツ戦でゴールを決めた金英権(キム・ヨングォン)がインタビューで「これまでの非難が少しは賛辞に変わったようで幸いだ。もう非難されないようにしなければという目標ができた」と慎重に心境を語った。

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