ピープル
超高齢社会・日本に活力吹き込む「筋肉博士」金憲経さん
「老化は足から来ます。年を取ると筋肉が減るのですが、まず下半身の筋肉が大幅に減ります。50歳を超えたら太ももやお尻の筋肉を集中的に鍛えるべきです」
超高齢社会の日本で元気なお年寄りを増やそうと活動している韓国人体育学博士がいる。地方独立行政法人「東京都健康長寿医療センター 」の金憲経(キム・ホンギョン)研究部長(62)だ。同センターは1972年に日本で初めて老年医学と健康長寿研究を目的に建てられた病院・研究所だ。金憲経博士は老化と筋骨格系の研究を総括しており、正規役員としては唯一の外国人。高齢者向けのさまざまな筋肉運動プログラムを担当・開発し、地域社会に広めている。
金憲経博士は日本の健康関連番組の常連だ。有名芸能人と一緒に出演して流ちょうな日本語で健康増進法を教えている。最近はTBSの番組に出演して健康ウォーキング法を紹介、話題を集めた。1年間でNHKなどの番組で約20回、朝日などの各新聞で約50回、博士の筋肉運動健康法が紹介されている。北は北海道から南は鹿児島まで金憲経博士を招いた健康講座は毎年50回以上行われている。
金憲経博士は慶北大学で体育学学士号、同大学院で教育学修士を取得した。そして、日本の文部省の国費留学生になり、筑波大学スポーツ科学研究科の博士課程に進んだ。専門は筋肉学で、同大学院で初めて5年の博士課程を4年で終えた。ところが、故国に戻っても韓国の大学には居場所がなかった。
そのため2年後、筑波大学の専任講師として日本に再び渡った。その後、東京都健康長寿医療センターに招かれたのをきっかけに、老化や筋肉・栄養の研究が花開いた。「『運動をしながらタンパク質である必須アミノ酸を摂取すると筋肉量がはるかに増える』という研究を発表すると、日本全国でアミノ酸摂取ブームが巻き起こりました。最近もさまざまな食品会社が臨床老化防止研究をしようと私の所にやって来ます」
これまでに発表した論文は約250本。骨盤の筋肉運動によりさまざまなタイプの尿失禁を治療した論文などで、日本老年医学会が毎年選ぶ最優秀論文賞を3回受賞した。これは日本全国で2人しかいない記録だ。
もともと日本の国公立機関は、役員のポストに外国人が就くことはできなかった。しかし、東京都は金憲経博士を研究部長に就かせるため外国人制限条項をなくした。博士は「韓国人として最も胸がいっぱいになる出来事だった」と話す。
「日本は超高齢社会の中でよく持ちこたえている」と言うと、金憲経博士は「地域社会で多様な筋肉運動プログラムが行われていて、高齢者たちが集まる体力低下予防活動が盛んです。その結果、現在75歳の高齢者の筋力と体力は10年前の65歳とほぼ同じになっています」と説明してくれた。博士が手がけた十数種の高齢者筋肉運動プログラムは現在、各地域の高齢者センターや特別養護老人ホームなどで実施されている。
金憲経博士は「日本は高齢者人口が総人口の7%を超えたころから、政府が老化・健康長寿に関する研究所を作ってきました。韓国は高齢者人口が15%を超えてもまだ国立の研究所が1カ所もないので、非常に遅れています。健康長寿プログラムはその国固有の習慣やライフスタイルに合わせてしなければ効果が薄いので、漠然と日本のものをそのまま韓国に持ち込んでやればいいと考えてはいけません。活力に満ちた超高齢社会を作るカギは、科学的に証明されている多様な老化防止・健康増進研究を地域社会に広めることにあります」と強調した。
東京=金哲中(キム・チョルジュン)医学専門記者