韓国国内に一定の仕事がなく滞在している外国人が健康保険を利用して発生した財政損失が2000億ウォン(約200億円)を超えたことが分かった。国会保健福祉委員会の崔道子(チェ・ドジャ)議員=正しい未来党=が国民健康保険公団から入手して4月29日に公開した資料によると、外国人の地域加入者が誘発した昨年の財政赤字は2050億ウォン(約210億ウォン)だったという。これら外国人が同公団に支払った保険料よりも、同公団が外国人の診療費として支払った金額の方がそれだけ多かったと言うことだ。こうした財政赤字は、2012年の778億ウォン(約80億円)から着実に増え、昨年2000億ウォンを上回ったものだ。

 昨年の時点で健康保険の外国人地域加入者は約27万人で、全加入者5094万人の0.5%に過ぎないが、これら外国人が誘発した赤字は健康保険全体の赤字額1兆4000億ウォン(約1427億円)の15%を占めている。外国人地域加入者数は12年の13万7407人から昨年は27万416人へと5年間で2倍近く増えた。

 専門家らは、これら外国人の多くが健康保険の恩恵を受けるために韓国に来て「医療保険の『ただ乗り』」をしていると見ている。

 外国人のAさんは15年、韓国の病院に10カ月間入院してがんの治療を受けた。この期間中、Aさんは健康保険料で月平均約7万9000ウォン(約8000円)ずつ、合計80万ウォン(約8万2000円)弱の支払いでがん治療だけでなく椎間板(ついかんばん)ヘルニアなどさまざまな治療を受けた。Aさんがこうした診療サービスの恩恵を受けた一方で、健康保険公団が負担した診療費は1億1700万ウォン(約1120万円)を超えた。Aさんは退院するとすぐ本国に戻った。

 このように健康保険に加入して恩恵を受けるだけ受けて本国に戻った外国人はこの3年間で3万人以上に達すると見られている。健康保険資格を取得して診療を受けた後、帰国して健康保険資格を喪失した外国人が15年から17年で約3万2000人いるからだ。健康保険公団がこれら外国人のために支払った治療費は227億9000万ウォン(約23億円)に達する。

■結核治療も「ただ乗り」急増

 韓国政府が健康保険財政から提供している結核診療事業でも外国人が「ただ乗り」するケースが急増している。韓国の病院で治療を受けた外国人結核患者は07年の791人から16年には2940人と10年間で3倍以上増加した。韓国人の結核患者は減っているが、外国人患者は急増しているのだ。16年7月から結核診療に必要な費用を全額、健康保険が負担することになり、健康保険に加入している外国人も無料で受診できるようになったためだ。外国人は健康保険に加入していなくても全国の保健所や国立結核病院で無料で受診できる。このため韓国に来る外国人結核患者が増え、財政負担はもちろん、韓国人が感染する危険性まで高まっているとの指摘もある。

 以前は外国人の健康保険加入条件に韓国滞在の基準そのものがなかった。外国人登録をして一定の健康保険料さえ支払えば加入できた。その背景には、韓国国籍を喪失した海外在住の韓国系の人々にも健康保険の恩恵を提供すべきだとの理由があったためだという。しかし、これを悪用する「ただ乗り」外国人が増えて財政損失が大きくなったことから、08年に3カ月間以上滞在しなければならないという基準を新たに設けた。現在は3カ月以上滞在した外国人に対して前年度地域加入者月平均保険料(2017年基準で8万9933ウォン=約9000円)1カ月分を前もって支払えば、健康保険の恩恵が受けられる。

 崔道子議員は「(健康保険の保障性強化政策)『文在寅(ムン・ジェイン)ケア』導入により、そうでなくても健保財政の負担が大きくなるのに、『ただ乗り』外国人まで健保財政をむしばんでいるのを政府はなぜ傍観しているか理解に苦しむ」と述べた。韓国の会社に就職した会社員や留学生が病気になった場合は当然、健康保険の恩恵を与えるべきだが、違法だったり、法の目をかいくぐったりするような健康保険『ただ乗り』は阻止すべきではないのかということだ。保健福祉部(省に相当)は「実態調査を通じ、主に健康保険の恩恵を利用しようとする外国人が地域加入者として加入するという道義的な問題があることをある程度確認した。滞在基準延長などさまざまな対策を検討している」と話している。

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