ソウル市鍾路区敦義門博物館村の9770平方メートルの敷地には、韓屋(韓国の伝統家屋)と近代的な建物が43棟建てられている。ソウル市が340億ウォン(約34億円)の税金を投入し、従来の建物をリフォームして村全体を博物館のようにした。昨年9月、都市建築ビエンナーレに合わせて開館したものの、イベントの閉幕後6カ月間にわたって、観光客がほとんど訪れていない。都心のど真ん中がまるで「幽霊村」になってしまったとの声が上がっている。

 4月16日午後に訪れた博物館村には、観光客がほとんど訪れていなかった。「価値ある建物を保存した、生きている博物館」と宣伝してきたものの、基本的な案内文さえも飾られていなかった。昨年の開館当時は「カフェやユースホステル、書店などが立ち入る予定」と明らかにしていた。賃貸収入で投資予算を回収するとの計画だった。しかし、現在のところ半分以上が空室だ。一部の入居業社もそのほとんどが市の募集で入居した工房で、観光客を集めることができない。

 数百億ウォン(数十億円)の税金を投入して造成した村でこうした状態が続いているのは、ソウル市と鍾路区が互いに敷地の所有権を主張しているためだ。敷地は、2014年に敦義門1区域に慶熙宮ザイマンションを建設するのを条件に、敦義門ニュータウン組合によって寄付進呈されたものだ。予算を投入して建物をリフォームしたのはソウル市だ。鍾路区は「ソウル市が一方的に用途を変更して建物を建てた。土地の所有権は鍾路区にある」と主張する。一方、ソウル市は「文化施設は、財政と運営能力がある市が所有権を持たなければならない」との立場だ。寄付進呈された敷地が公園として使われれば自治区に帰属するが、博物館のような文化施設には明確な規定がないため、意見の食い違いが生じている。

 市のずさんな運営を批判する声も上がっている。アン・ジェホン鍾路区議会議員(共に民主党)は「税金を300億ウォン(30億円)以上も投入したが、観光客が入っていない。ソウル市の予想違い」と主張する。市の内部でも「空間造成以降も活性化されていない」と指摘する声もある。

 近くの会社に通う50代の会社員は「ソウル市が高価な土地を買い上げて幽霊村にしてしまった」と言う。これについて、市の関係者は「2020年をめどに工事が進められており、今はまだ臨時開館中であるため、宣伝が不十分」と説明している。

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