昨年11月に韓国南部の浦項で起きたマグニチュード(M)5.4の地震は、付近の地熱発電所から地中に水を注入したことが直接的原因だという研究結果がまとまった。浦項地震は2016年9月の慶州地震(M5.8)に次ぎ、韓国で発生した地震としては過去2番目に強い地震だ。

 李晋漢(イ・ジンハン)高麗大教授、キム・グァンヒ釜山大教授ら研究陣は、科学誌「サイエンス」最新号に発表した論文で、過去40年間に浦項興海地区で発生した地震を分析した結果、2016年から始まった地熱発電所の水注入が地震の直接的原因であることが立証されたと指摘した。浦項地震は地熱発電所によって誘発されたとの主張だ。

 地熱発電は地下4キロメートル以上の深さに穴を2本堀り、一方に水を注入し、地熱で加熱した上で、発生する水蒸気を別の穴から取り出し、発電所のタービンを回すことで発電を行うものだ。昨年11月15日に浦項地震が起きた直後、震央が地熱発電所からわずか600メートルの地点だったため、科学界からは「地下に注入した水が地震の原因」という主張が出ていた。地下で高い水圧が発生し、周辺の地層を割ったか、既に形成された断層を滑らせたとの見方だ。研究陣は「韓国で地震観測が始まった1978年以降、2015年まで浦項興海地区でM2.0以上の地震が起きたことはないが、16年から地熱発電所による水注入が始まり、M2.0以上の地震が4回発生した」と指摘した。

 地震が最初に発生した位置も地熱発電所が水を注入するために地中に挿したパイプの深さとほぼ一致した。浦項地震の発生5日前、研究陣は地熱発電所付近に8台の簡易地震計を設置した。11月15日からM5.4の本震が発生するまでの間、9時間前から6分前にかけ、6回の前震が発生した。研究陣は前震の震源の深さは4-6キロメートル、本震の震源は4.5キロメートルで、地熱発電所のパイプが挿された深さとほぼ同じだという。一般的に韓国で発生する地震の震源の深さは10-20キロメートルが多い。

 研究陣は「浦項地震はこれまで世界で起きた地熱発電所誘発地震とは形態が異なる」とした。これまで地熱発電所が誘発した地震の最大規模はスイス・バーゼルで起きたM3.4だった。これまで国際学界では地熱発電所が誘発する地震は注入する水の量に比例し、浦項地震のようにM5.4の地震が起きるためには、1000万トンの水が注入されなければならないとみられていた。しかし、浦項地熱発電所による水の注入量はそれよりはるかに少ない1万2800トンだ。それにもかかわらず、M5.4の強い地震が起きたことについて、李教授は「浦項のように既に危険な状況にある断層であれば、少ない量の水を注入しても大規模な地震を誘発することがあり得ることを立証している」と述べた。

 一方、スイス、ドイツ、英国の研究陣も同日、「浦項地震は地熱発電所によって誘発された可能性が高い」とする論文を発表した。研究陣は衛星写真で観測された地表面の変化で断層運動を推定した結果、「地熱発電所から注入された水が断層を揺るがした可能性がある」とした。

 韓国政府の浦項地震調査研究団は、今回の研究結果について、「地熱発電と浦項地震に関連がある可能性は否定できない」としながらも、「関連性を明確に判断するためには追加的な証拠が求められる」との認識を示した。調査団長を務める李岡根(イ・ガングン)大韓地質学界長(ソウル大教授)は「今年3月から水を注入した後、パイプ周辺と断層に実際にどんな変化が生じたかなどを遠隔探査方式で調べている」と説明した。

ホーム TOP