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「胸触っていい?」「ホテル行こう」セクハラ事務次官を問責しない日本
発行部数44万部という日本三大時事週刊誌の1つ「週刊新潮」が12日、財務省職員のトップが数年間にわたり女性記者に対して常識を超えるセクハラ(性的嫌がらせ)発言を続けていたと報道した。その人物とは財務省の福田淳一事務次官だ。
福田次官は東京大学法学部を卒業して大蔵省(現:財務省)に入り、主な役職を広く務めてきた入省36年目の官僚だ。財務省は予算・決算の承認、国庫出納、貨幣発行、歳入・歳出、国有財産管理を担う「最強官庁」で、その中でも事務次官は政治的決定以外の実務を総指揮する。記者たちにとっても、財務省で最も重要な取材源だ。
被害者たちは匿名ではあるが、自分たちがされたことを具体的に証言した。被害者たちによると、福田次官は会食の時も仕事の時も突然、侮辱的な言葉を投げ掛けたという。ある女性記者は「『ホテル行こう』というのは基本」と、別の女性記者は「福田次官に『彼氏はいるの?』『どのくらいセックスしているの?』と聞かれた」と証言した。この女性記者が日本最大の広告代理店・電通の社員と交際していると答えると、福田次官に「それはお前、遊んで捨てられるぞ」とも言われたという。
福田次官は日中の取材時もセクハラ発言が止まらないとのことだ。ある女性記者が、森友学園問題が拡大しているのは首相夫人の名前が出ているからではないかと質問すると、福田次官は「デリケートな話なんだよ」「おっぱい触っていい?」と答えたという。
福田次官が別の女性記者に「胸触っていい?」と言ったので、女性記者が「ダメですよ」と答えたところ、「手縛っていい?」と言ったという証言も飛び出した。
週刊新潮は、政治家の資金問題や女性問題を刺激的に暴露・報道してきた商業雑誌で、過激な時もある。だが、今回は取材内容がしっかりとしており、朝日新聞や毎日新聞など5大紙やNHK・共同通信といった主なメディアもすぐに後追い報道をしている。
問題はその後だ。政府内の誰も福田次官に責任を問おうとしていないのだ。麻生太郎財務相は「事実なら、それはセクハラという意味ではアウト」と言いながら、調査する考えはないと答えた。被害者の証言が匿名によるものなので事実関係を特定するのが難しいという理由からだ。また、「緊張感をもって対応するように訓戒を述べた」「慎重さを欠いており、厳重注意した」「福田次官から申し出があり、十分な反省もあったと思っている」とも言った。財務省が森友問題に巻き込まれている状況で、このようなスキャンダルを出さないようしかり、本人も承知したので解任はしないということだ。
このような問題が起こっても、日本はインターネット上で多少騒動になるだけで、本格的な「Me too運動」に広がる兆しはない。昨年10月から今年初めまで、フリーランスのジャーナリストや人気作家、舞台俳優などが数回、実名で取りざたされたが、さざ波が立つ程度にとどまった。
専門家らは「文化的理由と政治的な理由の両方があるようだ」と分析する。日本は一度も国民が立ち上がって権力を覆したことがなく、決められた秩序を当然視する風潮が強い。女性に対するセクハラ問題でも、被害者の女性側が何らかの原因を作っているためだと認識する傾向が他国よりも強いとされる。