盆唐ソウル大学病院で外科医を務める韓虎声(ハン・ホソン)教授には、ほぼ毎日外国人の医師から電子メールが届く。「肝臓がんの腹腔鏡(ふくくうきょう)手術を見学させていただきたい」という問い合わせのメールだ。このようにして訪ねて来た日本人の医師だけでも、ざっと80人だ。肝臓がんの手術は大学病院で行うため、80人という数字は日本のほぼ全域の大学病院から訪ねてきたことを意味している。

 日本の腹腔鏡肝手術学会は、創立後の12年間、毎年韓虎声教授を招待し、特別講義を依頼してきた。13回目となる今年の特講も予定されている。毎年テーマを変え、韓教授を招いて特講を聞くということは、韓教授の手術の方法を何としても体得したいという決意の表れだ。日本人のある教授は「韓虎声教授が手術の方法を説明してくださったおかげで技術的に困難な右側の肝臓がんの摘出手術を行うことができた」と笑みを浮かべる。それ以前は、腹部を開く開腹手術を行っていた。腹腔鏡手術は、腹部に3、4個の小さな穴を開け、体外から器具を入れて操作する手術で、出血や後遺症が少なく、回復が早いことがメリットとして挙げられている。

 2000年代半ばまでは、韓国の医師たちが日本に手術を学びに行っていたものの、今では日本の医師が韓国へ来るようになった。韓国の医療界には、こうした隔世の感を感じさせる分野が相当数存在する。ソウル大学病院の外科医を務めるソ・ギョンソク教授チームは、生体肝移植手術の際に、肝臓提供者の肝を腹腔鏡で取り出す。すでに100件を超え、世界最多となった。これにより、手術の際に寄贈者が受ける身体的負担が大幅に軽減された。日本では数年前、肝臓の寄贈者が手術後に死亡して以来、生体肝移植が激減した。こうした理由から、日本人外科医たちがソウル大の手術室を訪問するようになった。

 前立腺がんや大腸がんのロボット支援手術は、日本よりも韓国の方が先に始めた。韓国で好評を得て、優秀な論文が出ると、日本の泌尿器科の医師たちが韓国国内のロボット支援手術室を相次いで訪問した。内視鏡や顕微鏡を使用することで、脊髄を切らずに椎間板ヘルニアや狭窄(きょうさく)症を治療する最小侵襲手術も、日本の神経外科医たちが学びに来る分野だ。

 「韓日逆転」分野の共通点は、新たな技術が登場した際に、韓国が勇気を出して飛び付いた点にある。腹腔鏡手術やロボット支援手術が初めて登場した当時が代表例と言える。韓国と日本の出発点は似通っていたが、韓国特有の革新性と誠実さで日本を追い抜いたのだ。スキーはうまく滑れないが、スノーボードはうまく乗れるというわけだ。そうでなくては、科学や医学界で実に22個のノーベル賞を受賞した日本を短期間で追い抜くことができるだろうか。日本が新しい技術について細かく確認し、試している間に、韓国が優位に立ったのだ。

 韓国の教育の特性上、創意的な「ファースト(first)」は得意でないかもしれないが、急速度で付いていって追い越す「ベスト(best)」は得意としている。第4次産業革命時代が開かれる中で、再びチャンスが訪れている。人工知能(AI)、ロボット医術、誘電体医学、幹細胞などスタートラインが似ているものがあふれている。基礎科学は基本に忠実に土台を固め、新技術の開発でリードする時代が訪れたのだ。

 にもかかわらず、前近代的な規制と先進国の中途半端なまね事は、韓国の医療界にとって大きな足かせとなっている。個人情報の保護という名分の下、非識別情報までも使用することができないようになっているため、韓国はビッグデータを利用した人工知能による医療機器や、診断・処方AIを開発することができずにいる。

 相変らず病院は、非営利機関として医療技術会社を設立することができないため、先端技術を事業化することができずにいる。幹細胞と誘電体医学は、厳格な臨床試験の手続きと評価のため、進展速度は非常に遅い。むしろ気難しい日本が「先承認、後評価」に乗り出している。先進国と同じようにしていては、リードすることができない。韓国の医療界がうまくやっているのをお手本に、第4次産業と医療産業の発展に向かって資源を投入していくべきだ。出発点さえ似ていれば、韓国の方がリードできるのだ。

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