【新刊】イ・ミンジン著、イ・ミジョン訳『パチンコ1・2』(文学思想刊)

 この小説を1行にまとめるとするなら、冒頭の文章がよいだろう。「歴史がわれわれを台無しにしたが、でも構わない」

 米国の代表的な韓国系作家が、植民地時代から1980年代、釜山の影島から日本の大阪、東京、横浜をまたぎ、近現代史の見落としてきた「在日韓国人」という巨大な鉄の玉の軌跡を追った。障害児のフンイ、娘のスンジャ、スンジャが日本に渡って生んだ息子ノアとモジャス、モジャスの息子ソロモンに至るまで4代にわたる屈曲。構想から脱稿までほぼ30年かかったが、昨年全米図書賞の最終候補となり、ニューヨーク・タイムズ、BBC放送など海外メディアで「今年の本」に選ばれるというジャックポットを引き当てた。

 「パチンコ」は、日本を支える合法的経済という面はありつつも、射幸性に根差した在日韓国人の基幹産業だと批判される、侮蔑的な空間だ。「日本は絶対に変わらない…お前はいつも外国人として生きていかなければならないだろう」。パチンコで大金を稼いだが、結局「悪い朝鮮人」から抜け出せない人々。著者は昨年12月、本紙のインタビューで「苦痛は人間の条件」と語ったことがある。「人生というのは、あの子がコントロールできないことでいっぱいだから、それに適応する方法を学ばないと。息子は生き残らなくちゃ」。しかし、苦痛は死を意味し得ない。368ページ、各巻1万4500ウォン(約1410円)。

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