韓国政府が9日に発表した、慰安婦問題をめぐる2015年の韓日合意後続対策について、外交部(省に相当)内でも「どっちつかずの取り繕い策」という声が上がっている。外交部長官直属のタスクフォース(TF=作業部会)調査を通じて「慰安婦合意は問題だらけ」との烙印(らくいん)を押したものの、結局は世論と韓日関係の板挟みになり、「合意は認められないが、再交渉の要求もしない」という矛盾した対策を打ち出すしかなかったということだ。外交部の康京和(カン・ギョンファ)長官が同日、事前に用意してき発表文を読んだだけで、質問に一切答えないまま会見の場を去ったのも、こうした政府の苦しい立場を現しているようだった。

■「日本10億円とは別に政府が10億円を充当」

 康京和長官は同日、「日本政府が拠出した『和解・癒しの財団』の基金10億円は韓国政府の予算で充当し、この基金の今後の処理方法については日本政府と協議するようにしたい。和解・癒やし財団の今後の運営については、該当部処(省庁)で慰安婦被害者・関連団体・国民の意見を広く取り入れて後続措置を用意するだろう」と述べた。慰安婦被害者支援団体などではこれまで、「和解・癒やし財団は解散させ、10億円は日本政府に返すべきだ」と主張してきた。しかし、一方的な「10億円返還」は合意破棄と見なされる可能性があるため、韓国政府が別個に同じ額の「政府充当金」を用意し、国民感情から来る拒否感を鎮めようという代案を打ち出したものだ。だが、「合意履行事項の1つである拠出金10億円に関して日本と再び協議するのは事実上の『再交渉』だ」という指摘もある。

 日本政府が拠出した10億円のうち、約40億ウォン(約4億2000万円)は和解・癒やし財団を通じて慰安婦被害者や家族に支給された。合意時の生存者47人のうち36人は1人あたり1億ウォン(約1000万円)、死亡者199人の遺族のうち68人は1人あたり2000万ウォン(約210万円)をそれぞれ受け取ったり、受け取る意向を表明したりした。韓国政府は、韓国の予算で別途充当する10億円とは別に、財団に残っている60億ウォン(約6億3000万円)には手をつけないとしている。

■「再交渉は要求しない」

 韓国政府が「日本政府の拠出金10億円を認めない」というのは、事実上、慰安婦合意を認めないものと解釈できる。しかし、康京和長官は「日本政府に対して再交渉を要求しない」と言った。

 また、同長官は「ただし、日本が自ら国際的・普遍的基準に基づいて真実をありのままに認め、被害者の名誉・尊厳回復と心の傷を癒す努力を続けることに期待する」とも述べた。 その上で、「慰安婦被害者の皆さんが一様に望んでいるのは、自発的な真の謝罪だ」という言葉で「追加措置の内容」も示唆した。15年の韓日合意に「最終的かつ不可逆的解決」という文言があったため、こうした「情緒的追加措置」の要求も日本側は合意の変更として受け止める可能性がある。

 政府の処理方針があいまいなのは、まず生存している慰安婦被害者の意見が分かれているためだと思われる。外交部は同日、「康京和長官は政府措置を発表する前、生存被害者31人のうち意思疎通が可能な23人に会った」と述べた。これは「被害者中心主義」を強調し続けてきたことに基づく措置だという。外交部によると、「韓国挺身隊問題対策協議会」(挺対協)などの支援団体に所属していない生存被害者の中には「破棄・再交渉ではなく、不十分ではあるが15年の合意で収めよう」「日本からもっと受け取ろうとすることで両国関係がこじれてしまってはいけない」という人もいたとのことだ。

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