金相坤(キム・サンゴン)副首相兼教育部(省に相当)長官はよく「フィンランドから学ぼう」と語る。金長官は先月28日に大統領府で「革新人材養成政策」を発表した時もフィンランドのゲーム会社スーパーセル社を紹介し「ノキアから解雇された社員が立ち上げたベンチャー企業で、すでに大きな成功を収め、フィンランドのベンチャーブームと経済成長を引っ張っている」と紹介した。その上で金長官は「学生たちが自ら企画し、自ら中心となって活動する革新的な教育がフィンランドにはある」と述べた。教育部はその前日、高校での単位制度導入計画を発表したが、その際にもフィンランドの教育制度を取り上げていた。

 スーパーセルを創業したイルッカ・パーナネン氏はノキアを解雇された経歴はなく、2000年代にスメアを立ち上げ、デジタルチョコレートの社長に就任するなど、ゲーム業界では名前が知られた人物だ。もちろんノキア出身のエンジニアも雇用しているし、スーパーセルやロビオなど何度も成功を収めてはいる。しかしフィンランドの若年失業率は今も20%台と高止まりしている。ベンチャー企業が幾つか成功しただけで雇用環境が劇的に改善するわけではないからだ。もちろんノキアは大企業で全盛期には2万5000人の従業員がいたが、フィンランドのゲーム業界で働く従業員は全て合わせても3000人に満たない。スーパーセルの社員も世界中にいるが、それでもわずか210人だ。例えとして取り上げるなら、このような事実もちゃんと伝えるべきではないだろうか。

 韓国ではどういうわけか「フィンランドに学ぼう」といった声が以前から根強かった。また教師や行政の担当者も毎年1000人はフィンランドの教育制度を学ぶため視察に行く。確かにフィンランドは家庭教師というものがほとんどないにもかかわらず高い学力を維持しているため、その仕組みや背景を学ぶのはとても良いことだ。ただしよくよく見るとフィンランドも教育では多くの悩みを抱えていることが分かる。デジタル時代についていけなかった教師たち、男女間の学力格差、校内暴力なども深刻だ。また最近は移民が増えた影響で、経済協力開発機構(OECD)による学力テストでも少しずつ順位が下がっている。

 フィンランドは何か問題に直面すると、常に独自の解決策を模索する。世界の教育政策の流れが「競争」の方向に進んだ時、人口が少ないフィンランドは「国が一つになることが重要」と考え「協力」や「平等」を最優先に掲げる教育政策を推進した。

 校内暴力問題も加害者の処罰や被害者の支援にとどまるのではなく「傍観する第三者の児童生徒たちも積極的に被害者の側に立つ」という新たな観点を導入した。男子が女子よりも学業成績が劣る傾向が鮮明になると、ボードゲームなどを使って男子の競争心理を刺激し、学習の意欲を高める方法を模索している。最近は多くの国で「第4次産業革命に備えた教育改革」を叫んでは大騒ぎだが、フィンランドでは「教育の本質である協調性やコミュニケーション能力を育てていけば、デジタル化にも十分対応できる」と比較的落ち着いている。このように他国の制度に倣うばかりではなく、従来の方法の長所を生かすことで、フィンランド独自の解決策を見いだそうとするやり方は固く守っている。

 つまりフィンランドから学ぶことがあるとすれば、それは何かの制度や方法ではなく「自分たちに合った独自のやり方」を模索するその態度ではないだろうか。

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