英国の権威ある文学賞「ブッカー国際賞」を2016年に受賞した女性小説家・韓江(ハン・ガン)氏の名前が、ある新聞に掲載されたコラムの筆者として再び話題になっている。数日前、米紙ニューヨーク・タイムズに「米国が戦争を語る時、韓国は身震いする」という題の同氏のコラムが掲載された。北朝鮮の核問題に端を発する昨今の韓半島(朝鮮半島)戦争の危機に対する思いを書いたものだ。同氏は「海外メディアが思っているほど韓国人は戦争に無関心なわけではない」「むしろ、激しさを増す(米朝間の)言葉の戦争が実際の戦争に発展するのでは、と恐れている」と書いた。だが、問題は、同氏が韓半島の危機的な状況を見る視点だ。

 韓江氏は「すべての戦争は人間を『人間以下』の状態にする」としている。それならば、核による挑発行為で戦争危機の原因を作った北朝鮮をまずたしなめるべきだ。同氏は北朝鮮に対して「炎と怒り」を語り、「心配するな。戦争は米国で起こらない」と言ったトランプ米大統領の言葉を引用した。ほとんどの韓国人はトランプ大統領のドタバタに好感を抱いていない。しかし、こうしたすべての問題は「ソウルと東京・ワシントンを火の海にする」という北朝鮮の脅迫に端を発しているが、同氏はその原因については言及していない。韓国人たちはトランプ大統領に身震いをしているのか。それとも、住民を飢えさせ、核により韓半島を恐怖に陥れている北朝鮮の「金王朝」の方に身震いしているのか。

 「韓国戦争(朝鮮戦争)は強大国が韓半島で行った代理戦争だった」という記述は明らかに事実誤認だ。北朝鮮の金日成(キム・イルソン)が中国の毛沢東やソ連のスターリンと緻密な事前準備をした末に起こした赤化侵略戦争が韓国戦争であることは、数多くの証拠により立証されている事実だ。「代理戦争」という主張は北朝鮮の戦争責任をごまかし、現在の韓半島の状況に関して誤解を生じさせかねない。

 最大の問題は、筆者の個人的な意見であるのにもかかわらず、この文章がまるで韓国人全体の意見であるかのように書かれていることだ。誰が同氏に対して、北朝鮮の核問題や韓半島の戦争危機について韓国人の意見を代弁する資格を与えたというのか。北朝鮮の核問題の解決方法をめぐり、韓国国内で激しい意見の対立がある中、同氏の文章は韓国人の考えを、米国をはじめとする世界各国に間違って伝える恐れがある。小説家であれ、誰であれ、政治問題・社会問題に関して自身の意見を語ることはできる。だが、それにしても同氏がどういう経緯でこのような文章を書くことになったのかが気になる。

 金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が核爆弾を作ったのは、本人が言っている通り、韓国をつぶすためだ。北朝鮮政権は人々を機関銃で穴だらけにし、火炎放射器で焼き尽くした集団だ。今、韓国人5000万人が実際にその集団にめちゃくちゃにされることになるかもしれない危機に直面している。このような状況でも小説家は芸術の自由を守らなければならないというなら、どんな意見を言うべきだったのだろうか。同氏がこの文章で「トランプも嫌だが、金正恩はもっと嫌だ」と書いていれば、もっと説得力があっただろう。

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