このところソウル市内の観光ホテル周辺では毎晩、いわゆる「ぼったくりタクシー」を摘発する取り締まり要員が張り込んでいる。外国人の乗客に対して法外な料金を請求したり、メーターを動かさずに走ったりする悪質な行為が後を絶たないため、ソウル市は2015年4月、こうしたタクシーを取り締まるための専門チームを発足させた。道路交通法に精通し、外国語の能力試験にも合格した取り締まり要員13人が活動中だ。外国人女性が被害に遭うケースが多いことから、結婚して韓国に移住した中国人・日本人の女性6人も要員に選ばれた。退職したシルバー世代7人も活動している。

 取り締まりチームは毎晩午後8時から翌日午前2時まで、2人1組で外国人の多いホテル周辺を巡回する。外国人がタクシーから降りると、下車したところをスマートフォンで撮影し、タクシーのナンバーをメモする。乗客には乗車地と料金を確認し、距離に比べて料金が高すぎる場合、タクシーを摘発する。事情を聞くのは1日に4-5人ほどだという。

 今月10日午後11時ごろ、記者は取り締まり要員のユさん(47)と共に、明洞のあるホテルの前で様子を見ていた。するとタクシー1台が入り口に停車し、中国語を話す女性3人が降りてきた。ユさんが女性たちに話を聞くと、乗車地点はホテルから500メートルしか離れていなかった。基本料金で乗れる距離だ。しかし女性たちが支払ったのは2万ウォン(約2000円)。ユさんが「料金が高すぎる。タクシー会社に連絡して対処する」と話したところ、女性たちの表情が固まった。女性たちの話によると、タクシーはメーターを動かしていなかった。ぼったくりタクシーの中には、乗客を乗せる前に既にメーターを動かしていたり、昼間なのに深夜割増ボタンを押していたりするケースもあるという。

 摘発されたタクシーは、翌日にソウル市庁に出頭するよう通告を受ける。メーターを動かさなかった場合、課徴金40万ウォン(約4万円)、法外な料金を徴収した場合や領収書を発行しなかった場合は、過怠料20万-60万ウォン(約2万-6万円)が賦課される。取り締まりを始めた2015年当初、違法行為の摘発件数は420件だったが、昨年は261件と約38%減少した。しかし、法外な料金を徴収したケースは15年の97件から昨年は127件へと逆に増加した。ソウル市は昨年2月から、違法行為を3回以上摘発された場合は運転免許取り消しという「三振アウト制」を導入。今年6月、制度導入以来初めて「三振アウト」となったタクシー運転手は、基本料金で乗車できる距離で3万6000ウォン(約3600円)を徴収するなど、本来の料金の5-12倍もの料金を受け取って2回警告を受けた末、タクシーの運転資格を剥奪された。

 退職後に取り締まり要員として活動を始めたホンさん(65)は「現場の写真を撮ったり外国人乗客に事情を聞いたりすると、タクシーの運転手が降りてきて、ののしられたり胸ぐらをつかまれたりすることもある。国のイメージを守るという使命感を持って仕事をしている」と話した。

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