夏休みで北海道の函館に行ってきた。香港・ナポリと共に「世界三大夜景」と言われる函館の夜景を見ようと展望台に向かうロープウェイに乗った。高度が上がるにつれて窓ガラス越しに市内の夜景が見えてくると、あちこちから歓声が上がった。「わー、きれい!」という韓国語が聞こえてきたので振り返ってみると、女子高生2人が夜景をバックに「自撮り」をしていた。「ほかの家族はいなくて2人だけで来たの?」と聞くと、「1カ月間アルバイトをして貯めたお金で来た」と答えた。高校生でも自分の力でお金を稼ぎ、日本に旅行に来られることに、あらためて驚いた。

 だが、その驚きはやがて「そういうことも十分できそうだ」という考えに変わった。函館の名物ハンバーガー店「ラッキーピエロ」でハンバーガーとウーロン茶1杯、そしてマグカップにいっぱい詰まったフライドポテトが出てくるセットメニューの値段は約6600ウォン(650円)だった。韓国で人気の日本映画『Love Letter』の舞台となった坂道や日本初の西洋式城郭で囲まれている五稜郭公園など、函館の名所を巡る市電は600円の一日乗車券で乗り降り自由だ。食費・交通費・買い物代などで一日1万円はかかるだろうと覚悟していたが、ホテルに帰るといつもお金が残っていた。往復約30万ウォン(約2万9000円)の格安航空券や宿泊費を合わせても3泊4日の旅行にかかったお金は約100万ウォン(約9万5000円)だった。

 ただ安いだけではない。1泊11万ウォン(約1万円)の3つ星ホテルでは、スタッフがパスポートを確認すると韓国語で「函館にようこそ」とあいさつした。スーツケースも部屋まで運んでくれた。町の小さな居酒屋でも「カンコク(韓国)」と言えば韓国語で書かれたメニューを渡してくれた。観光客のための儀礼的な親切かもしれないが、「少ないお金でもおもてなしをしてもらえる」という思いを旅行期間中、ずっと感じた。

 先日、韓国旅行と海外旅行の費用を比較する記事を書くにあたり、複数の知人から「旅行の時の話」を聞かせてもらった。韓国国内を旅行した知人たちが異口同音に言うのは「お金を使っているのに嫌な思いをした」という言葉だった。先月、江原道束草に行った知人は「2人前で10万ウォン(約9500円)の刺身の盛り合わせを頼んだら、ツマの海藻ばかり山盛りで、刺身はほんの数種類しかなかった。店主に文句を言ったら『この辺りの別の店でもみんな同じだ』と逆ギレされた」と教えてくれた。先週末、釜山に行った別の知人は「数カ月前に15万ウォン(約1万4000円)で泊まった宿が繁忙期にはちょうど2倍の30万ウォン(約2万8000円)請求してきた」と語った。長期休暇や連休シーズンの「ぼったくり料金」に「席料」や浮き輪・パラソルなどを借りる各種「レンタル料」を追加で払えば、だまされたような気分になる人も多いだろう。

 一生懸命働けば働くほど、長期休暇にゆっくりしたいという欲求はますます高まるが、韓国の観光地は依然として「休暇シーズンだけの商売」ばかり考えている。その間に低価格競争を繰り広げる格安航空会社、10分で終わる予約代行サイトの海外ホテル予約、韓国よりも安くなった物価…。海外旅行へのハードルはますます下がっている。

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