文在寅(ムン・ジェイン)大統領は歴史に名を残す大統領になる可能性が高い。良い面でか悪い面でかは未知数だ。米情報機関は金正恩(キム・ジョンウン)氏が核弾頭の小型化に成功したと判断したという。レッドラインを越え、水が首の上まで迫った。もはや米国と北朝鮮は過去20年間のようにあいまいなままやり過ごすことはできない。どんな形であれ、結末を迎えるしかないとすれば、それは文大統領の任期中に起きるはずだ。それで「文在寅」という名前は歴史に残ることになる。どのように記録されるかという問題だけだ。

 事態の結末は破局または金正恩体制の崩壊、あるいはその中間の落とし所になるだろう。その渦中に文大統領はソウルに砲弾が降る中、全軍に戦闘を命じなければならない瞬間に直面する可能性があり、大韓民国の国民が北朝鮮の核に圧倒されて暮らす事態を招いた大統領になる可能性もある。最悪の場合、在韓米軍の撤退を見守る大統領になるかもしれない。金正恩氏はいずれ最終的な大規模核実験とミサイル弾頭の大気圏再進入実験を行うはずだ。「真実の瞬間」は既にドアの外で扉をノックしている。

 文大統領はわずか数カ月前、「大統領になったら、開城工業団地、金剛山観光を直ちに再開する」と述べていた。現在は「北朝鮮と対話を行うべき時ではなく、最大限圧力を加えるべき時だ」と語る。数カ月前には高高度防衛ミサイル(THAAD)を「危険物質」扱いしていたが、現在は臨時配備すると言っている。同一人物なのかと疑うほどだ。数カ月で姿勢が180度変わったのは文大統領と周辺人物が北朝鮮問題についてどれほど誤った考え、幻想を抱いていたかを示している。夢から覚めると、目の前に断崖絶壁があったようなものだろう。そうでなければ、軍事戦略の専門家が一人もいない大統領府(青瓦台)の安全保障室をつくりはしなかったはずだ。人間が予想も覚悟もしていないことに持ちこたえることは容易ではない。

 トランプ米大統領の「炎と怒り」発言、北朝鮮の「グアム島周辺射撃」は極端な表現で、合理的な思考の範囲内では現実になるとは考えにくい。米国の予防攻撃はたとえ文大統領が同意したとしても難しい。いまこの瞬間に金正恩氏がどこにいるか不明で、北朝鮮の核施設の位置と全貌も分からないからだ。攻撃が失敗した場合に備えた韓米全軍の事前準備を中国、ロシア、北朝鮮に察知されずに進めることもできない。しかし、誰にも分からないのは偶発的事態だ。予期しない衝突が戦闘拡大につながれば、その報告を受けるのは文大統領だ。

 トランプ大統領はまず、中国に貿易圧力を加え、北朝鮮に対する原油供給を阻もうとする可能性がある。しかし、中国が北朝鮮を捨てることはない。既に損得勘定は終わった。米国との貿易戦争にも準備ができているだろう。北朝鮮はロシアから原油を導入することもできる。米国の北朝鮮封鎖も中国側は阻止できない。結局は瀬戸際で米国と北朝鮮が交渉する可能性の方が高い。

 金正恩氏は核廃棄の見返りとして、制裁解除はもちろん、韓米同盟を終了させ、在韓米軍を撤退させろと要求するはずだ(在韓米軍が実際に撤退しても、金正恩氏は核を手放さないはずだ)。多くの専門家は米国が韓米同盟の終了だけは受け入れられないとみている。

 そうだとすれば、われわれが進むべき道は二つだ。北朝鮮は核とICBMの保有国になり、米国はそれを公式には認めない状況になり得る。時がたてば、対北朝鮮制裁はあいまいになるはずだ。もう一つは、北朝鮮がこれ以上核弾頭を増やさず、ICBMも発射しないという条件で対北朝鮮制裁が解除されるという妥協だ。北朝鮮は米国が認める核保有国となる。いずれの場合でも韓国は近くにある北朝鮮の核と遠くにある米国の核の間で生きていかなければならない。6・25(朝鮮戦争)以降の大韓民国の生存方式を根本から変える安全保障上の事件だ。

 1991年までは北朝鮮には核がなく、韓国に核があったが、26年で状況は逆転し、北朝鮮に核があり、韓国には核がなくなった。世界史にこうした例はない。あの世で金日成(キム・イルソン)、金正日(キム・ジョンイル)親子が万歳していることだろう。犯罪集団の北朝鮮の体制がさらに安全になり、自由民主主義の韓国が不安になるというこの歴史ドラマにはどんなタイトルを付ければよいだろうか。

 米国と北朝鮮の間でこうした現象が進む中、文大統領がどんな立場を取るかは分からない。数カ月前まで「開城工業団地再開」「THAAD配備延期」を主張していた文大統領ならば、米国と北朝鮮による交渉を歓迎し、南北首脳会談を提案するかもしれない。政府の努力で核危機が平和的に解決されたと自慢するような気もする。北朝鮮に徹底的にだまされても、「国が安全になった」と主張した太陽主義論者のように強弁するかもしれない。しかし、「北朝鮮に対する軍事力強化」に言及する今の文大統領ならば、北朝鮮の核保有公認を安全保障危機と受け取め、対策に乗り出すようにも思える。

 文大統領がいつの日か、国民の前に立ち、驚くべき重大発表を行う姿を思い浮かべてみよう。北朝鮮は盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権下で最初の核実験を行い、文政権の時代に核開発を締めくくる。文大統領が書いた本のタイトルのようにこれが本当の『運命』ではないかと思う。

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