7日の国会人事聴聞会に出席した康京和(カン・ギョンファ)元国連事務総長特別補佐官の姿を見ると、62歳とは思えないほどどこか若々しく、純粋な女子大生のような印象を持った。韓国外交部(省に相当)長官に指名されている康氏は片手にペンを握り、議員らの質問にたまにメモを取りながら答えていた。康氏が眼鏡の奥から資料をのぞき込むときには、必死でテスト問題を解く学生のようにも見えた。白髪をなびかせながら国連事務総長補佐官という重要な職務を遂行していた当時が懐かしくも感じられた。

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領が初の女性外交部長官として康氏を指名したニュースを聞いた時、記者は心の中で拍手を送った。外交部は康氏のように「外交官試験を受けていない」「ソウル大学出身でない」人物を受け入れたがらないのはもちろん、「男性でない」つまり女性は簡単に食い込めない組織だ。言い換えればエリート外交官といえばほぼ例外なく(1)ソウル大学出身(2)外交官試験に合格(3)米国での業務経験-に加え、(4)男性であることも重要な要素だ。この中で一つでも欠けた人物が重要な地位に就けば「あんな人間がなぜあの地位に上り詰めたのか」などとささやかれる様子を記者も幾度となく目にしてきた。そのため康氏が外交部の文化に変化をもたらすことを記者はひそかに期待していた。韓国政府樹立から69年で初めて女性が外交・安全保障関連部処(省庁)のトップに就任する大きなチャンスだったのだ。

 ところが康氏はその後、偽装転入など個人的な問題が次々と明るみに出た。しかしその時点では「少しぐらい問題があっても、その能力を見てほしい」という言葉に十分な説得力があった。3人の子供を持つ既婚女性が海外で仕事をしていたのだから、夫が韓国でどこの土地をいくら払って買ったのか、税金はちゃんと納めていたのかなど、全てをチェックできなかったという説明も決して信じられないわけではなかった。康氏の長女は偽装転入(実際に住んでいない場所を住所として届け出ること)によって有名高校に進学し、米国籍まで持っているが、それも康氏の目には「母親でありながら仕事で忙しく、十分な世話ができなかったので問題が生じた」という程度の認識だったのだろう。

 ただ問題になるのはその能力だ。野党議員らが「THAAD(米国の最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル」)がなければ、北朝鮮のミサイル攻撃に対する備えはどうするのか」と質問すると、康氏は完全に黙り込んでしまった。康氏を擁護したい与党所属の委員長が優しい口調で答弁を促したが、それでも何も語れなかった。康氏は「聴聞会の準備には1週間しかなかった。個人的な問題への対応にほとんどの時間が割かれ、影響で懸案については細かくチェックする時間がなかった」と弁解し、最後は「広い心で理解してほしい」などと述べた。しかし韓国が直面する外交・安全保障の現状は、康氏の言い訳を聞いてやれるほど余裕のあるものではない。結局この聴聞会によって野党3党は全て康氏の外交部長官就任について反対に回った。中道系「国民の党」に至ってはその理由として「道徳的な問題に目をつむれるほどの高い能力を見いだせなかった」と非常に厳しい評価を下した。

 女性であることを理由に外交部長官になれないわけではない。しかし女性という理由で能力のなさに目をつむるわけにもいかない。女性が何かに失敗した場合、その個人の失敗ではなく女性そのものに問題があると見なされがちだ。「これだから女子供には大きな仕事を任せられない」といった言葉がまた出そうで怖い。

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