▲国際部=呉允熙(オ・ユンヒ)記者

 「天国へのお引越しのお手伝い」をうたう本の会社がある。家族や頼る人がいないため孤独死した高齢者の遺品を整理する「キーパーズ(Keepers)」という会社だ。引っ越し会社を経営していた吉田太一社長は、事故で両親を亡くした少女に頼まれて遺品整理を手伝ったのをきっかけに、2002年にこの事業を始めた。

 キーパーズの事業が急成長していた2010年末、東京で取材のため吉田社長に会った。日本各地に5つの支店を設け、年間1500件の遺品整理を担っていると言っていた。「機会があれば韓国にも進出したいです。一人暮らしの高齢者が増えている韓国は市場として急浮上していますから」と吉田社長は言った。当時、日本では孤独死が深刻な社会問題になっていたが、「世間から完全に疎外されたごく少数の人が経験すること」と受け止められている雰囲気が強かった。ところが、それから5年もたたない14年、NHKが老後破産問題を集中的に取り上げて報道して以降、雰囲気は一変した。

 人並みの暮らしをしていたのに、高齢になると貧困層に転落するというのが「老後破産」だ。食事を抜き、体の具合が悪くても病院に行かない、いわゆる「下流老人」はほとんどが普通の人々だった。20-30年間まじめに働き、貯金もそこそこあったが、平均寿命が伸びて、長い場合は40年間も節約し、年金だけを頼りにするため、破産を避けられないという。本人や配偶者が病気にでもなれば、通帳の残高があっという間に減る。不況も長引き、経済的に余裕がない子どもたちに頼ることもできない。

 NHKの報道が呼んだ波紋は、孤独死とは比べものにならないほど大きかった。平凡でまじめに生活していた普通の人々が、長生きしたがために貧困層に陥ってしまう社会の中で、自分の老後も安心してはいられないという危機感が急速に広がった。

 日本の週刊誌「週刊現代」はこのほど、「下流老人に一番なりやすいのは『年収700万円世帯』」と報道した。ある程度経済的余裕がある人々の方が、かえって将来のための準備を怠っているからだという。経済誌「プレジデント」は「『子ども最優先』夫婦の行く末は老後破綻(はたん)」と報道した。

 最近の統計庁の調査によると、韓国は2026年に65歳以上の人口が全人口の20%を超える超高齢社会に突入する見通しだ。韓国は日本よりも深刻な事態に陥る可能性が高い。日本の高齢者には資産家が多いが、韓国の高齢者の貧困率は53%で、経済協力開発機構(OECD)加盟国の中でも最下層だ。中産層もほとんどが子どもの私教育費につぎ込み、自分たちの老後の備えは後回しだ。

 約10年後、韓国も超高齢社会を迎える。今からでも日本の事例を参考にして対策作りに努めなければならない。ただ「遠い将来のことなのに」と何もしないでいれば、日本よりもはるかに大きな規模で老後破産・下流老人問題にぶつかることになる。

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