安鍾範(アン・ジョンボム)元大統領府政策調整首席秘書官が2日、検察に出頭した。複数の大企業に対し、ミル財団とKスポーツ財団に総額774億ウォン(現在のレートで約70億円、以下同じ)の資金を強制的に出させた職権乱用の容疑だ。また検察はこの日、崔順実(チェ・スンシル)氏の逮捕状を裁判所に請求した。崔容疑者は安容疑者の立場を利用し、企業に対して強制的に資金を出させていたわけだが、要するに二人は完全に共謀していたということだ。安容疑者はこれまで「企業は自発的に寄付を行った」などと主張してきたが、検察の取り調べを前に「朴槿恵(パク・クンヘ)大統領の指示を受けてやった。崔氏と大統領は直接取引を行ったと聞いている」と周囲に漏らしていたという。要するに安容疑者は「崔順実氏のことは知らなかった」とでも言いたいようだが、それが正しいかどうかを確認するには、いかなる形であれ朴大統領の事情聴取がどうしても必要になってくる。

 安容疑者の言葉はおそらく事実だろう。企業に数百億ウォン(数十億円)もの現金を出させるには、いくら大統領府の関係者であっても大統領の指示あるいは黙認なしには難しいはずだ。しかし首席秘書官という地位は文字通り大統領を直接支える参謀あるいは相談役として非常に強大な権限を持っているため、単に大統領の指示通りにしか動かなかったとも考えにくい。大統領の間違った判断や行動にもその程度には差があったはずだが、今回のような重大な過ちを大統領が犯そうとしたのであれば、安容疑者は大統領に「これはまずい」と直訴すべきであり、もし大統領がそれに従わないのであれば、潔く辞任すべきだった。もし安容疑者がそうしていれば、今回の一連の事態もある程度ブレーキがかかっていただろう。しかし大統領府にはこれを言える人間が一人もいなかった。安容疑者も大統領の指示に盲目的に従っておきながら、今になって「指示通りやった」などと自分には責任がないかのような口ぶりだ。彼らがいかにして法の目をかいくぐり、また罪を軽くできると考えたのかは分からないが、国民から委託された権限を悪用し、国民を裏切るという重大な犯罪を犯したことは否定できない事実だ。

 大統領の指示通りやったという安容疑者の主張が正しければ、本人の法的責任はある程度軽くはなるだろう。しかし大統領府首席として大統領の暴走を許した責任は、法的責任とは比べものにならないほど重い。安容疑者さえしっかりしていれば、問題はここまで大きくならなかったかもしれないからだ。安容疑者は自らを従犯(主犯を手助けする罪)と主張したいのだろうが、このように考えれば主犯とも何ら違いはない。

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