8カ月の息子を持つキムさん(31)=女性=は最近、子どもの「トルチャンチ(1歳の誕生日)」をするかどうかをめぐって夫とけんかした。キムさんは近い親戚だけを招待して家の中で行う質素な誕生日を願ったが、夫はこれに反対した。夫は「両親も一生に一度しかない初孫の1歳の誕生日をきちんと祝うよう願っていて、実際これまで他の家の子の1歳の誕生日に参加しては渡してきた『金一封』も惜しいとは思わないか」とのことだった。キムさんは「結婚式でも見せ掛けだけの儀式をなくそうというご時世に、子どもの記憶にさえ残らない1歳の誕生日に数百万ウォン(数十万円)も投入しようというのは理解できない」と主張した。

 子どもの1歳の誕生日をするかどうかをめぐって悩む親たちが増えたことで、宴会場や飲食店に客を招待して行う1歳の誕生日が減っている。1歳の誕生日を専門に行うソウル市中区のある宴会場の関係者は「5、6年前までは1歳の誕生日の予約が数カ月前からいっぱいだったが、ここ1年間で1歳の誕生日を開いたのは片手で数えられるほど」と話す。ソウル市江南区にある1歳の誕生日の専門飲食店は、今では結婚式の披露宴や他の集まりを誘致するのに忙しい。1歳の誕生日に司会者を派遣する業者の代表を務めるイさん(31)は「1歳の誕生日を専門に行うイベント企業が減ったことで、司会者たちが他の仕事を探し始めた」と業界の実情に触れた。

 1歳の誕生日は、乳児の死亡率が高かった時代に赤ちゃんが1年を無事に乗り切ったことを記念するために開かれた家庭内での宴会だった。この宴会が、1980-90年代から家族だけではなく親戚や知人たちを呼んで宴会場や飲食店で行うイベントにまで成長した。しかし、最近では赤ちゃんが早期死亡するケースがほとんどなくなったため、「初の誕生日」に特別な意味合いを付与しない人々が多くなったのだ。生後100日を記念して開く「百日祝い」がほとんどなくなってしまったことも同じような脈絡といえる。

1歳の誕生日にかかるコストや祝儀が負担だという認識も広がりつつある。1歳の誕生日をするためにはイベント会場の賃貸料と食事代で数百万ウォン(数十万円)はかかる。中小企業に勤めるユ・ギョンジュンさん(33)は、初娘の1歳の誕生日を行う代わりに両家の両親を呼んで飲食店で一緒に食事をした。ユさんは「結婚する時、伝貰(チョンセ=高額の保証金を預け、その運用益で家賃負担)でマイホームを準備したため銀行から借りた融資を返さなければならない状況で、1歳の誕生日に大金を投入するのは負担だった」という。

 1歳の誕生日に招待される側も負担に思うのは同じだ。就職ポータル「ジョブ・コリア」が昨年行ったアンケート調査の結果によると、回答者1640人のうち32.9%が「1歳の誕生日への参加は負担」と回答した。葬儀が負担だという回答(34.7%)と同じような水準だった。会社員のチャンさん(30)は「最近の若者にとって1歳の誕生日は単なる友だちのお子さんの誕生日にすぎない。私も結婚後は1歳の誕生日をしないだろう」という。来年1月に子どもが1歳の誕生日を迎えるチュさん(31)=女性=は「最近では1歳の誕生日を盛大に行って多くの人を呼ぶのは恥さらし」と言い切る。

 にぎやかな1歳の誕生日の代わりに家族同士の特別な思い出を作るための旅行や記念写真の撮影は、着実に増える傾向にある。ソウルのある育児写真専門スタジオの社長は「一般の家族写真や還暦の写真撮影に対する需要が減った分、1歳の誕生日の写真撮影で売り上げを補っている」という。

 中央大学社会学科のシン・グァンヨン教授は「経済が高速成長しているときは、家族の経済力を誇示しようとする欲求のため、1歳の誕生日が大型化した側面がある。今は不況の長期化によって、豪華な1歳の誕生日が敬遠される対象となっている」と説明する。ある育児用品メーカーがアンケート調査を行った結果、生後12カ月未満の子どもを持つ母親190人のうち約30%が「1歳の誕生日を行う計画がない」と答えている。このうち68%がその理由として「見せ掛けだけの儀式に見えるため」と回答した。

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