事件・事故
意識失ったタクシー運転手、乗客は救命措置せず立ち去り /ソウル
先月30日午後10時25分ごろ、ソウル市銅雀区の路上でタクシー運転手(62)が運転中に突然意識を失った。意識を失う直前にブレーキを踏んだが、タクシーはゆっくりとしたスピードで中央線を越え、反対車線に停車していた男性(43)の車にわずかにぶつかって止まった。
驚いた男性が車を降りてタクシーに近づくと、後ろに乗っていた乗客が出てきてどこかへと立ち去った。運転手は意識のない状態で運転席に倒れており、男性の通報を受けて警察と救急隊が出動したが、すでに死亡していた。死因は心臓の持病による呼吸困難だった。警察の関係者は「後ろに乗っていた乗客が運転手の異常を感じてすぐに救急車を呼び、応急処置をしていれば結果は違ったかもしれない」としながらも「乗客の行動は刑罰の対象ではないため捜査の計画はない」と伝えた。
乗客が危篤状態に陥ったタクシー運転手を見捨てて立ち去ったのは、今年2回目だ。8月25日午前、中部の大田で乗客2人を乗せていたタクシー運転手(63)が突然心臓まひ状態に陥り、前を走っていた車に追突した。だが、乗客たちは「空港バスの出発時間が迫っていた」という理由で運転手を見捨て、トランクから荷物を出して立ち去った。運転手は目撃者の通報を受けて出動した救急車で病院に運ばれたが、命は助からなかった。
今回の事件を機に、韓国も「善きサマリア人の法」を導入すべきとの意見が出ている。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)やオンラインコミュニティーなどでは「命を救えるかもしれない人を見捨てていくのは殺人に等しい行為」「危急の事態に陥った他人を見つけても手助けしなければ処罰されるという『善きサマリア人の法』があれば、こうしたことが起きなくなる」といった書き込みが目につく。ドイツやフランスなどでは、危険に陥った人を見捨てたことが立証されれば懲役刑に処される。