10年前に子どもが生まれた時は育児が最大の悩みだった。24カ月未満の子どもは保育園に預けられなかったほか、地方にいる両親にも任せることができなかった。妻も育児のために職場を辞めることを願わなかった。結局唯一の代案は、住み込みの家政婦を雇うことだった。うわさを頼りに探した揚げ句、中国人同胞の女性を雇うことになり、2年間にわたって子どもを預けた。月給は120万ウォン(約11万円)だった。

 その後10年の歳月が流れたが、共稼ぎ夫婦が感じる育児環境は大きく変わったとは思えない。変わったことがあるとすれば、住み込みの家政婦に対する月給だけが大幅に上昇したという点だ。数日前、子どもを生んだ同僚の女性記者は、「朝鮮族女性」への月給が200万ウォン(約18万円)に跳ね上がったと嘆いた。韓国人を雇えば250万ウォン(約23万円)は下らないという。

 シンガポールは韓国に比べて1人当たりの国民所得や物価ははるかに高い方だが、住み込みの家政婦を雇うことについては韓国よりも負担が少ない。フィリピンやインドネシア出身の外国人家政婦が存在するためだ。これら家政婦に支払われる月給は通常600-700シンガポール・ドル(約4万5000-5万2000円)で、これに政府に支払う雇用負担金の270ドル(約2万円)を合わせても総経費は900ドル(約6万7000円)となる。シンガポール人には決して大きな金額とは言えないが、東南アジアの女性勤労者からすれば母国で稼げる月給の数倍にも上る大きな金額である上、宿泊まで解決できるのだ。こうした理由から、シンガポール全体の122万世帯には外国人家政婦が23万人も存在する。1-2人世帯を除けば家庭ごとに家政婦が存在すると言っても過言でない。家政婦用の小さな部屋が用意されたアパートもよく見掛ける。

 シンガポール政府は1970年代以降、家政婦を国外から募り始めた。自国の女性の育児への負担を減らして経済活動への参加率を引き上げるためだ。この政策は相当な効果を発揮した。70年代には40%台だった女性の経済活動への参加率は、60%台にまで跳ね上がった。韓国は依然として50%台初めにとどまっている。

 急激な人口減少を目前に控えた韓国でも、家政婦を海外から募ろうとする意見が出始めている。延世大学のモ・ジョンリン教授は先日発表した論文で「働く30代女性のほとんどが低賃金で外国人家政婦を雇う意向があり、市場が開放されれば女性の経済活動への参加率は10%以上上昇する」と説明した。政府でもこの問題をめぐり激論が交わされているという。一方では、女性の経済活動への参加率の上昇と低出産対策の一つとして門戸を開放しようと主張し、もう一方では非熟練女性の働き口を奪ってしまうことに対する懸念、若い家政婦を雇用することに伴う家庭内不和などの問題を挙げ、反対しているという。シンガポールのケースからすると、こうした懸念は十分に管理可能な問題といえる。また、最初から家政婦市場を開放しなかったなら話は別だが、月給200万ウォンの中国人同胞には門戸を開きながらも、70万ウォン(約6万4000円)のフィリピン人家政婦を拒む理由はどこにもない。「保育は国が責任を負うから子どもだけを生めばいい」という約束を守ることができないなら、家政婦に子どもを任せて職場に出る女性の経済的負担を減らすべきではないのか。

ホーム TOP