国際総合
人前で泣けない中年男性が集まって泣く「涙活」、日本で静かなブーム
今月3日午後、東京都新宿区の会議室に、小学生から60代までの老若男女約30人が集まった。主催者側が明かりを消すと、5分間にわたって静かな動画5-6本が続けざまに流された。真っ暗な部屋の中で、人々が静かに涙を流し始めた。
「10代のころ、母親が事故で亡くなった。葬式のとき、親戚たちの話を聞いて初めて知った。実の母親は私を産んですぐに亡くなり、苦労して私を育ててくれた母親は継母だったということを(自己啓発書の内容の一つ=原文ママ)」
「おばあちゃんが作ってくれた食事がみすぼらしくて反抗した。亡くなったおばあちゃんに言いたい。『おばあちゃん、ごめんなさい』と(ガス会社のCM=原文ママ)」
このイベントは、知らない人たち同士がインターネット上で告知を見て、一つの場所に集まり、みんなで泣くという「涙活(るいかつ)」イベントだ。泣くことでストレスを発散しようという趣旨だ。主に悲しい内容の動画を一緒に視聴する。涙活は2013年、イベントプランナーの寺井広樹氏(36)が初めて企画し、その後1カ月に2-3回ずつ、これまでに150回以上行われてきた。
参加者には女性が多いが、3-4人に一人の割合で男性もいる。初めてイベントを開催してから、これまでに延べ3000人以上の男性が参加した。大学生や高齢者もいるが、主に40-50代の中年の男性だ。服装からして「課長」や「係長」という感じの人たちが多い。彼らはなぜ、友人や家族の前で泣かず、あえて「涙活」に参加するのか。寺井氏は「自分が泣けば、友人や家族が心を痛めるのではないかと配慮しているからだ。男性は会社で泣けば『弱虫』呼ばわりされ、家に帰って泣けば、妻や子どもが心配するだろうからと、ここへ来るようになった」と話した。
日本人たちはさまざまな集まりに「○活」という名前を付ける。例えば就職活動は「就活」、結婚を前提としたイベントに参加することを「婚活」といった感じだ。そうした「○活」の一つが「涙活」というわけだ。この日、会場で出会ったイベントプランナーの山田吐怒無(つとむ)氏は「みんなで集まって怒る『怒活』も準備している。来年にイベントを行う計画だ」と話した。