海水浴場でのアリの群れ、体長1.7メートルの深海魚、路上に噴出した温泉…。

 いつもなら何気ない話題としてやりすごされるこれらの現象が、釜山では最近、怪談のネタとなり、尾ひれがついて広まっている。

 今月21日、釜山市内で原因不明のガスの臭いが広がる事件が発生して以降、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などには「地震の前兆」という書き込みが相次いでいる。同市は関係機関を総動員し、原因の究明に乗り出したが、市民たちの不安を解消するには至っていない状況だ。結局、同市は政府レベルでの調査を求める方針を固めた。

■専門家「アリの群れはよくある光景」

 23日、水営区の広安里海水浴場でアリの群れが出現した様子を撮影した動画がSNSに寄せられた。その後、24日にかけてインターネット上で「地震が発生する前に動物が回避する行動を取るように、アリたちも群れで移動している」といううわさが広まった。これに対し、釜慶大学環境大気学科のオ・ジェホ教授は「アリは梅雨明け直後に繁殖期を迎える、えさを探すため移動する。砂浜を移動するアリの群れは、以前からたびたび目撃されており、地震の前兆とする科学的な根拠はない」と指摘した。

 水営区の関係者も「毎年、この時期に広安大橋周辺を行き来していたアリの群れが死ぬと、砂浜に押し流されてくるが、今年はそのようなことも起こっていない」と話した。

 23日、蔚山市の化学工業団地周辺の住宅街では「ガスのにおいがする」という通報が20件ほど寄せられた。同じ日、慶尚南道巨済市の海水浴場では、体長1.7メートルのタチウオ科の深海魚が捕獲された。22日午前6時ごろには、釜山市東莱区温泉洞の路上では、約20分にわたって温泉が噴き出した。これもまた「地震と関連がある」とのうわさが広まった。

 だが、温泉が噴き出したのは、古い配管に穴が開いたのが原因で、タチウオ科の深海魚もたびたび捕獲されており、地震と関連した現象である可能性は低い。

 釜山大学地質環境科学科のソン・ムン教授は「大きな地震が発生する前に小さな地震が発生すれば、ラドンガスが噴出することがあるが、これは無色無臭で、人間の嗅覚では感知されない。ガスの臭いが地震の前兆だというのは全く事実ではない」と指摘した。

■釜山市、「実体のないデマ」に戦々恐々

 一連のデマのきっかけとなったガスの臭いの原因を調べている釜山市は、事件発生から5日目の25日午前、5回にわたって対策会議を開いた。同市は「広安大橋を通過した車の追跡、船舶や工場などからの有害な化学物質の流出の有無の点検、付臭剤(無色無臭のガスが漏れた時に臭いがするよう、臭気を付ける物質)を扱う業者の車の移動ルートの点検などを行ったが、原因を究明するに至らなかった。市レベルでの原因究明には限界があると判断し、政府レベルでの調査を提案していく」と説明した。

 国民安全処(庁に相当)は26日、政府ソウル庁舎で環境部(省に相当)やガス安全公社など関係機関と合同で緊急安全点検会議を開き、対策を話し合う予定だ。

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