社会総合
韓国社会に広がる「割り勘」に飲食店イライラ
6月7日昼12時30分、サラリーマンに人気のソウル市江南区駅三駅近くの日本料理屋を訪れた。一つのテーブルで昼食を共にした職場の同僚7人が、自分が食べたうどんや丼など4500-6000ウォン(約400-550円)の食事代を別々に支払うと言ってクレジットカードを7枚差し出してきた。誰が何を食べたのかメニューをいちいち確認しながら従業員が会計する間に、食事を終えた5人の客が後に並び、46平方メートル(14坪)の飲食店はレジを待つ人々でたちまちいっぱいになった。同料理店を経営するハンさん(63)は「お客さんの半数以上が団体で食事をしながらも、会計は各自別々にカードで決済するため、業務がまひしてしまう」とため息をつく。
自分が食べた食事代を各自が別個に支払う「割り勘」を利用するサラリーマンが増えたことで、レストランの経営者たちは頭を抱えている。顧客が殺到するピーク時に、レジで団体客が食べたメニューを各自確認しなければならないため、食事を出すのが遅れるからだ。レジで待つ顧客に「どうして会計にこんなに時間がかかるのか」と抗議されることもよくあるという。
飲食店業界によると、職場の同僚同士が一緒に食事をして上司が食事代を支払うという文化は多くのケースで消滅した。不景気が長期化したことで、サラリーマンの財布が薄くなったためだ。今年4月に就職ポータルサイト「サラムイン」がサラリーマン472人を対象に行ったアンケート調査の結果によると、これらのサラリーマンが支払う昼食代は平均で6300ウォン(約570円)だった。同調査では「昼食代が高くなった」という回答が43.9%(207人)に上ったほか、59.3%(280人)は「昼食代が負担」と回答した。サラリーマンのイさん(32)は「5-6人のチームが食べた食事を一人で決済するのは給料をもらっているサラリーマンにとっては負担なことではないか。会計に時間がかかっても各自食べた昼食代は自分で負担するのが楽」と話す。
割り勘の拡散は、クレジットカードの決済金額の統計からも確認することができる。国税庁によると、飲食店でカード(クレジット、 小切手保証、デビットなど)決済した件数は、2009年の12億6250万件から13年には26億1600万件と4年で2倍以上に増加した。しかし、決済1件当たりの平均金額は同期間に4万ウォン(約3600円)から2万9000ウォン(約2600円)と、むしろ27.5%減少した。韓国外食業中央会の関係者は「職場の会食や同窓会の集まりのように一度に数十万ウォン(数万円)という大きな金額を決済するケースを除けば、ほとんどのお客さんが自分の食事代を別個に支払っている」と話す。
主にクレジットカードで支払われる割り勘の拡散には、飲食店のオーナーたちは頭を抱えている。ソウル市瑞草区瑞草洞の近くでスンドゥブ専門店を経営するハンさん(65)は「昼食時のお客さんは同じ時間にやって来て、一度にどっと出ていくが、料理を作ってお出しする時間に各自別々に支払うと言って列を作っているのを見ると、イライラしてくる」という。
一部の飲食店は「個別のカード決済は不可」という方針を打ち出している。食事代を支払おうとする顧客で飲食店の入り口がごった返しているのを見て、食事にやって来たものの帰ってしまうお客さんがいるためだ。ソウル市中区明洞にあるチムタク(鶏の甘辛煮)料理店は先月、レジの前に「個別決済は不可」という案内文を掲げた。同飲食店の主な顧客層である20-30代のうち、約80%がカードで割り勘をしている。従業員のパクさん(44)は「『どうして決済方式を勝手に決めるのか』『カード決済できないようにするのは不法ではないか』と抗議するお客さんが多いが、数十人が殺到する昼食の時間帯に別個に支払うお客さんたちが多く、苦心した揚げ句に下した決断」とその内幕に触れた。
会計の際に各自注文した料理の種類と値段を確認するのが容易でないと感じた一部の飲食店は、自己救済策として注文と会計の方法を刷新している。ソウル市麻浦区合井洞のキムチチゲ専門店は、300万ウォン(約27万円)を投じて飲食店の入り口に食券の自動販売機を設置した。お客さんがメニューを選んでカードで決済した後、発給された領収証を店員に渡す仕組みだ。オーナーのキムさん(49)は「来る日も来る日も昼食時の会計戦争に追われるため、従業員をもう一人雇わなければならない状況だった。機械は高いが従業員をもう一人雇うことを思えば安上がり」と話した。