コラム
【寄稿】韓江氏のブッカー国際賞受賞、韓国人として大きな喜び
『菜食主義者』が2016年の英国ブッカー国際賞を受賞したことは、韓国文学が成し遂げた大きな成果だ。しかも韓江(ハン・ガン)氏は今回、ノーベル文学賞を受賞したトルコのオルハン・パムク、中国を代表する作家の閻連科、イタリアの人気作家エレナ・フェランテなど、世界的に著名な作家を抑えて選ばれただけに、韓国人としても大きな誇りを感じる。
韓江氏による今回の受賞で韓国文学も今や世界的に注目を集めるようになり、ノーベル文学賞にも一歩近づいた。今や海外の読者たちも韓国文学に関心を持つようになるだろうし、海外の出版社も韓国文学作品の出版を積極的に進めるだろう。国際的に権威ある賞を受ければ国の威信も高まる。そのように考えれば、国民がノーベル文学賞を求めているのは間違いでない。作家たちはノーベル賞を受けるということには超然としているかもしれないが、韓江氏の受賞をきっかけに、その願いは今や決して実現不可能な夢ではなく、現実としてわれわれに近づきつつあるのだ。
韓国はこれまで大きな経済発展を成し遂げた最先端のテクノロジーを持つ国として、さらに韓流の拠点として世界に知られてきた。また今回ブッカー国際賞を受賞したことで、文化面でも名実共に強国であるとのイメージも持たれるようになった。文学における韓流を通じ、今や大衆文学はもちろん、韓国のより次元の高い文学も海外に知られるようになり、韓国の国策である文化の隆盛も海外で大きな成果を収めつつあるわけだ。
韓江氏の『菜食主義者』は、テロを通じて世界的に関心が高まっている「他者に対する暴力」、そして「人間の尊厳」といった問題を卓越した詩的感受性と洗練された文体で描写している。作家は家父長的な社会の暴力、善の仮面をかぶった隠れた暴力、大義を前面に出した制度的な暴力を次々と告発し、人間と人間の理解の欠如が暴力を生み出す現実を描き出している。例えば主人公の父親は菜食主義者の娘を理解できず、自分だけが絶対に正しいという独善的な考えに陥り、娘に肉食を強要する。この種の暴力は自らの信念のために他人を殺すテロリストや、政治的イデオロギーに傾倒し、考え方が異なる人間を敵と見なす過激派などにも見いだすことができる。
『菜食主義者』が名誉ある受賞作となった背景には、翻訳家のデバリー・スミス氏の功績も大きかった。スミス氏は文学的感受性、卓越した文章表現力、そして韓国と英国の双方の言語と文化に深く精通した理想的な翻訳家だ。韓江氏の受賞は、韓国文学の世界化に優れた翻訳家がいかに重要かを改めて知らしめてくれた。
韓江氏のブッカー国際賞受賞は米国でも大きく報じられている。米国バンダービルト大学のヘレン・シン教授は「『菜食主義者』は今米国の各大学の英文科でも大きな人気を集めている」と伝えている。海外在住の韓国人ではなく韓国文学そのものに対し、米国の文学研究者や学生たちの関心も集まり始めている。これは韓国文学が世界の文学界の本流に加わったことを意味することであり、われわれに大きな勇気と力を与えてくれている。
韓国文学を世界に広める作業は文化体育観光部(省に相当)の韓国文学翻訳院、大山文化財団、KLマネジメントなどが協力して行っている。韓国文学翻訳院はこれまでKLマネジメントに所属する15人の作家の作品132編の翻訳を支援し、KLマネジメントはその原稿を持って海外の出版社などと交渉を行い、一方で韓国文学翻訳院と大山文学財団は主に海外の出版社と直接交渉し、韓国文学の出版を進めてきた。今回の受賞はこの3者の努力がついに大きな成果を出したことを意味する。ここにわれわれは大きな喜びを感じている。