「帝国の慰安婦」の著者、朴裕河教授が名誉毀損罪で起訴されたことに、日本で米国人らを含む54人が抗議声明を出した。韓国では同様の声明のほか、私たちを批判する声明や意見も出ているが、そこには誤解が多い。声明に参加した一人として真意を説明させていただきたい。

 私たちへの批判は主に二つある。起訴は元慰安婦のハルモニたちの告訴を受けたもので、権力が自ら介入したわけではない、ということ。そして、私たちが「学問・表現の自由」を掲げる余り、朴教授が彼女らの名誉を毀損した事実を直視していない、というものだ。

 まず、私たちは告訴の事実を知っており、抗議はそれを前提にしていた。すでに裁判所が仮処分によって著者に多くの文章の削除を命じたことも憂慮していたが、検察が著者を犯罪者扱いするに至り、見るに見かねて声を上げたのだ。いくら告訴されたとはいえ、検察には判断の自由と責任がある。刑事的処罰をもって特定の歴史解釈を強要するのは一線を超えている。

 次に、著者は本当にハルモニたちの名誉を毀損したのだろうか。たとえ中に誤解を与える表現があったとしても、一部の記述を感情的に取り上げて、短絡的に問題にするのは、著書の真意を読みそこなっている。総じて見れば、著者は植民地支配下で日本人の一員として兵士を慰める役割を強いられた女性たちの構造的問題を論じており、ハルモニたち個々の名誉を傷つける意図がないのは明らかだ。私はこれを読んで、彼女たちを蔑むどころか、その辛さと悲哀が胸に迫った。そういう読者が多いことをハルモニたちに知ってもらいたい。

 慰安婦の多様な実態を明かした著者は「日本軍によって無理やり連れ去られ、性奴隷にされた少女」という極端なイメージにとらわれることが問題解決を妨げる一因だと主張した。そんなイメージに合わなければ救済に値しないかのような考え方こそ問題だというのだ。また、日本の国家責任は法的には問えないという著者の見解には異論があってよいが、では多くの女性をだまして集めた業者の責任は全くないと言えるのだろうか。私たちが朴教授を評価するのは自分たちの姿も直視するからであり、決して日本の免責を望んでいるからではない。

 私たちへの批判声明には、日本が一切の責任を否定してきたような記述があるが、これも心外だ。「アジア女性基金」は国民募金による「償い金」(1人200万円)のほか、政府も「医療・福祉支援金」(1人300万円)を出してきた。総理大臣の「お詫び」の手紙もつけた。これでは不十分だといのならともかく、韓国でも約60人がこのお金と手紙を受け取っているのに、そうした事実さえ全く無視しているのは公平でない。

 私たちは慰安婦問題の建設的な議論を願っている。幸い、批判声明は朴教授の刑事的断罪は不適切だとしているが、それなら公開討論を提案する前に、まず告訴の取り下げを働きかけ、静かな環境を作っていただけないだろうか。

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