コラム
【コラム】中国の経済危機に見る共産党の限界
中国の製造業が急速に不況に陥り、世界の株式市場がまたも発作を起こした。一度や二度ではなく、同じようなことが繰り返され、世界の投資家も中国経済の司令塔による危機管理能力に疑問を抱き始めた。疑問の核心は何か。
米国経済の司令塔は中央銀行に当たる連邦準備理事会(FRB)を率いるイエレン議長だ。中国でそれに当たるのは公式には中国人民銀行の総裁だ。しかし、投資家は地位がそれよりはるかに高い李克強首相の発言を注視している。FRBは行政と独立しているが、人民銀は国務院(中央政府)の傘下機関だからだ。
イエレン議長は通貨政策でおおむね柔軟に市場の要求を受け入れる。最近の利上げ見送りを金融市場は「市場の期待を受け入れた措置だ」と評価した。一方、李首相は市場の流れに逆行する政策をしばしば打つ。最近3カ月の状況がそうだった。
李首相は今年7月初め、株価下落が続くと、23兆ウォン(約2兆3000億円)の資金を投入し、株価の下支えを試みた。年金ファンドに政府が資金を貸し付け、株式を買い入れさせた。韓国が1980年代の軍事政権当時に用いた代表的な「官治金融」方式だ。しかし、「実弾」を浪費しただけで失敗に終わった。
為替政策でも弱みを見せた。8月に3日間で人民元を4.5%切り下げ、国際金融市場にショックを広がったことから、あたふたと収拾に乗り出した。10日後には「人民元が長期的に切り下げられる根拠はない」と宣言し、先月には「人民元の勝ちは高くもなく低くもない中間を維持する」と変動幅まで提示した。
為替政策は極秘事項なので、言及を避けるか「市場にとって決定される」という原則論を繰り返すことが国際的な慣例だ。そうした慣例に反したものだから、ルー米財務長官は「(中国の)責任を問う」とまで発言した。
李首相の失敗原因はどこにあるのか。専門家は「ブレーキがない共産党一党独裁の限界」だと指摘する。米国は市場に配慮した政策を取り、与野党が議会で事後の政策チェックを行う。それに対し、中国は共産党が目標を立て、その目標に合わせる形で市場に制約を加える。先月共産党序列2位の李首相は2020年までに国有企業で市場メカニズムを大幅に拡大すると希望に満ちた宣言を行った。しかし、そこには「国有企業に対する共産党の指導を堅持する」という目標が付いていた。共産党の既得権を維持しつつ、市場競争も拡大するという13億人の主張に対し、残る60億人の世界市民は首をかしげる。
中国は「社会主義経済」が「社会主義市場経済」に発展し、世界の二大国へと成長した。その影響で市場と政治の間で摩擦が起きているが、政治改革は党内部、行政手続きの改革にとどまっている。指導部は国際感覚が不足しており、政策は市場が最も嫌う「予測不可能」なことだらけだ。そのため、世界の金融市場の混乱と不安が長期化しているのだ。
「科学的社会主義」の創始者であるマルクスは1859年、著書「政治経済学批判」の序文で、自身の思想の核心をこう要約した。「社会の経済的土台が変化すれば(政治・法律など)全ての巨大な上部構造が徐々にまたは急激に変わる」。中国も例外ではないようだ。