韓国軍
F35技術移転拒否、ロッキード・マーチンに責任を問わない韓国防衛事業庁
韓国空軍が次期戦闘機(FX)としてF35の配備を決める過程で約束されていた、アクティブ・フェーズド・アレー(AESA)レーダーの統合など関連中心技術4件の韓国移転が、米国政府の反対により白紙となった。これに関連して、防衛事業庁(防事庁)は納得し難い弁明と無責任な態度に終始しているという批判が強まっている。
防事庁の関係者は22日、米国政府が中心技術4件の韓国への移転を承認しなかったことについて「この4件は韓国側が追加で要請したものなので、ロッキード・マーチン社が責任を取る必要はない。最初に提案したときから(承認される)可能性はないと考えていた。技術は韓国側が開発すればよい」と語った。こうした防事庁の釈明は、昨年9月、韓国軍がF35戦闘機を40機配備するという7兆3418億ウォン(現在のレートで約7445億円、以下同じ)規模の契約を米国ロッキード・マーチン社と結んだ後に表明した立場とは、全く異なっている。防事庁は当時「技術移転がきちんと履行されない場合、合意覚書により、航空機メーカーの履行保証金を没収する。合意された事項を最優先で確保し、韓国型戦闘機(KFX)事業に支障が出ないようにしたい」と説明していた。米国から技術移転を受けるのが難しく、ロッキード・マーチン社に責任を問えないということを既に知っていながら、技術移転効果を大きく見せ掛けていたというわけだ。
■米国メーカーの責任を免除してやる韓国軍
韓国軍がF35配備を通してロッキード・マーチン社から提供を受けようとしていた技術は、当初は21件だった。後に防事庁は、メーカー側に4件の中心技術の移転を追加で要請した。最先端のAESAレーダー、赤外線探索および追跡装置、電子光学標的追跡装置、電磁波妨害装置に関する統合技術だ。米国政府は、これらの技術の海外移転を、安全保障の観点から徹底的に禁じてきた。それほどに独自開発が難しい、高難度の技術なのだ。防事庁は、中心技術を持ち込んで、KFX開発事業の際に不足する部分を埋めようとした。
ところがロッキード・マーチン社が難色を示すと、韓国軍当局は「韓米の安全保障ラインを通して米国政府を説得すればいい」として、先の21件の技術移転とは異なり、4件の中心技術については履行保証金を支払わないようにすると言った。韓国自身が、米国メーカーの責任を免除してやったわけだ。契約締結の後、防事庁は技術移転が不確実な中で「技術移転の経済的効果だけでも14億ドル(1680億円)に達する」とPRした。韓国軍当局が中心技術の移転効果について誇大広告を行ったのは、当時、KFX事業に対する懐疑論を鎮めようとする意図があったからだという指摘がある。
■無駄に11カ月過ごした韓国軍
与党セヌリ党に所属するユ・スンミン議員は22日、国政監査で「(今年4月、米国政府が技術移転を不許可とした後)韓国軍は何もせず、8月になってから、国防部(省に相当)の長官が米国の国防長官に協力を求める公文を送った」と批判した。韓国軍当局は、昨年9月に契約を結んだ後、米国政府を相手に技術移転を受けるため特段努力もせず、11カ月を事実上無駄に過ごしたということだ。
■独自の技術開発の可能性には疑問
韓国科学技術評価院(KISTEP)は2013年、国防部へ提出した研究領域報告書の中で「FX事業を通して中心技術の移転を受けられなかったり、開発費用の調達が困難になったりした場合、KFX事業を推進することはできない」という意見を示した。それでも、韓国空軍の鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)参謀総長は、22日に鶏竜台で開かれた国会国防委員会による国政監査で「米国が4件の技術を提供しなくとも、KFXを開発する上で問題はない」と発言した。
しかし、独自の技術開発をめぐっては懐疑的な見方が多い。KFX事業は、開発費8兆6700億ウォン(約8800億円)を含め、120機の量産におよそ18兆ウォン(約1兆8300億円)掛かると推定されている。中心技術を技術協力または独自開発で賄おうとしたら、さらに巨額の費用と時間を要することは避けられない。
また、韓国空軍のチョ・グァンジェ企画管理参謀部長(少将)は「中心技術を韓国が独自開発した場合、ほかの装備との互換問題が発生しかねない」と語った。