コラム
【コラム】世界的な歴史学者187人が韓国に呈した苦言
著名な世界の歴史学者187人が日本の歴史歪曲(わいきょく)をとがめたことについて、まずは胸のすく思いがした。彼らは生涯を日本研究にささげてきた碩学(大学者)たちであり、知日派たちだ。巧妙な言葉で日本の国家責任を否定してきた安倍首相としては困り果てていることだろう。
韓国は心強い友軍を得たように「それ見たことか」とだけ言っていればいいのだろうか。だが、そう安心するには彼らの声明に盛り込まれた2つの文が引っかかる。歴史学者たちは「慰安婦問題は日本だけでなく韓国や中国の民族主義的攻撃によりあまりにも歪曲され、政治家やジャーナリストだけでなく研究者たちさえも歴史的探求の基本的な目的を失っている状態だ」と述べた。また、「元慰安婦たちの苦痛を避け、国が民族主義的目的のため悪用することは国際的な問題解決を困難にし、被害女性の尊厳をさらに冒涜(ぼうとく)すること」とも書いている。歴史学者たちは声明の草案をめぐり、メールをやりとりしながら修正に修正を重ねたという。あえてこの2文を盛り込んだのには深い思慮があったのだろう。
声明が発表された後、韓国のある外交官は国内メディアのインタビューで、声明に「歪曲」と「悪用」という文言が入った理由を「(歴史学者たちが)韓国の味方をしているという印象を与えず、可能な限り多くの人々が署名できるようにするための意図的な努力だった」と説明した。学問の自由と中立性を追求する学者たちにとっては冒涜に聞こえるということだ。まさにこうした自己中心主義への警告として、彼らはこの文言を入れたのかもしれない。
今、韓日間では日本の明治時代の産業施設をユネスコ世界遺産に登録する問題が争点になっている。登録候補23施設のうち八幡製鉄所など7カ所について「第二次世界大戦中に朝鮮人を強制連行して軍需品を作った戦犯企業だ」として韓国国内に登録反対の世論が高まっている。外交部(省に相当)の尹炳世(ユン・ビョンセ)長官は先週、国会で「ユネスコ世界文化遺産委員国に韓国が反対していることを伝えて説得する」と述べた。しかし、何をもって反対するというのか、そのようにして最終的に登録を阻止できるのかについては分からない。ドイツのフェルクリンゲン製鉄所も1994年にユネスコの世界遺産になった。 1873年に建てられたこの製鉄所は、第一次世界大戦時にドイツ軍のヘルメットの90%を生産し、第二次世界大戦時には海外の労働力を搾取して手りゅう弾を作った戦犯企業だった。尹長官は大衆の情緒に従って漠然と「反対する」と言うのではなく、精巧な論理と事実をもとにドイツと日本の近代産業遺産登録のどこが同じでどこが違うかを指摘すべきだ。
歴史学者187人は民族主義的な「歪曲」と「悪用」が何なのかを具体的には語っていない。しかし、韓日間の歴史認識問題は、今や韓国人同士が声を上げて日本を攻撃し、自足するような範囲を超えている。全世界がこれを見守っており、アカデミズムまで加勢している。大きな枠組みで見て、客観的に説得力のある論理を積み重ねて行かなければ、大きな国益を逃してしまう。
大衆は民族主義的になりがちだ。それをあおって利益を得ようという一部政治家や活動家もいる。日本に対する世界の著名な歴史学者たちの批判を「第三者のものだから意味がある」と言うなら、韓国人に対する彼らの苦言も「第三者のものだから価値がある」と受け止めなければ、成熟した姿勢だとは言えない。