中国武術の中心地、少林寺(河南省)でカンフーを学ぶ青少年のうち約40人は毎日サッカーボールを練習に使う。彼らの夢は武術の一人者になることではなく、メッシのような世界的なサッカー選手になることだ。

 カンフーのルーツである少林寺がサッカー修行を導入したのは2010年からだ。アフリカ・カメルーンの元代表選手をコーチに招くほどの熱の入れようだ。少林寺武僧訓練基地の責任者、釈延魯氏は「武術とサッカーの間には少なからぬ共通点がある。少林武術の精神がサッカーに加われば、練習効果が高まる」と話した。

 少林寺は最近、面積330万平方メートルの敷地に「グローバル少林サッカー産業団地」を整備している。大規模な練習センターを設け、少林寺を「サッカーの総本山」にする狙いだ。

 中国に実際に「少林サッカー」まで登場したのは、習近平国家主席のサッカー愛が背景にある。習主席は自分を「サッカーマニア」と呼ぶ。執務室にも自分がサッカーボールを蹴る様子の写真を掲げてある。

 習主席は2月27日「中国サッカー改革総合プラン」を明らかにした。プランは「中華民族の偉大な復興という中国の夢とスポーツ大国の夢は相通じる」とし、「サッカーの発展を阻む構造的な弊害を取り除く」と宣言した。その上で「サッカー発展の鍵は長期的な努力と豊富な人材にある」と指摘した。

 北京市社会科学院体育文化研究センターの金汕主任は「中国建国以来、(共産党が)こうしたサッカー強化プランを打ち出したのは初めてだ。中国サッカーの前途に立ちはだかるさまざまな障害が消えるきかっけになる」と述べた。

 習主席は2011年、当時の孫鶴圭(ソン・ハッキュ)民主党代表から元韓国代表、朴智星(パク・チソン)選手のサインボールを贈られた際「中国がワールドカップ(W杯)に出場し、W杯を誘致し、W杯で優勝することが願いだ」と語っている。昨年3月の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)でも「サッカー台頭の夢」に言及し「中国のサッカーは世界の舞台に立つことを夢見なければならない」と強調した。中国代表がW杯出場を果たしたのは2002年韓日大会が唯一だ。

 中国は「W杯の夢」実現に向け、昨年末にサッカーを小中学校の必修種目に指定。2017年までに2万カ所余りの「サッカー特色学校」を設置することを決めた。少林寺がサッカーセンターを拡充しようとしているのも、習主席のサッカー愛に歩調を合わせたものといえる。

 英BBC放送の中国語版サイトによると、中国は能力ある少年選手10万人を養成することを目標に掲げている。中国不動産最大手の万達集団は先月、スペインのプロサッカーチーム、アトレチコ・マドリードに20%出資すると発表。同社はさらに、W杯の放映権の独占販売権を持つスイスの企業、インフロント・スポーツ&メディアの買収を進めているもようだ。これも中国のサッカー強化に向けた歩みの一環といえる。

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