自民党の二階俊博総務会長が来月13日から16日にかけ、韓日国交正常化50年を記念し、県知事や官庁トップ、企業家、一般人ら約1000人からなる「日韓友好・交流観光団」を率いて韓国を訪れる。関係の冷え込みで国交正常化の記念文化行事が中止される中、今年初めて行われる大規模な民間交流イベントとなる。

 二階氏は衆議院議員に11回当選し、経済産業相、運輸相などを歴任。アジア外交を重視する政治家として知られる。総務会長は韓国の政党の事務総長に当たる自民党の重要ポストだ。二階氏は23日、東京都内の自民党本部でインタビューに応じ「日韓関係の改善に努めることは政治家の責務だ」と強調した。

 自民党を代表する「親韓派」議員に挙げられる二階氏が韓国と初めて縁を結んだのは、1982年のことだった。和歌山県議会議員として地元高校のフィールドホッケーチームを率い、親善試合のため韓国南部の大邱とソウルを訪れた。「生徒たちは、言葉は通じなくても身振り手振りでコミュニケーションし、すぐに親しくなった。当時の生徒たちは、そのときの経験から数十年経った今でも『韓国が好きだ』と言う」

 民間交流の大切さを実感した二階氏は、約5500社の旅行業者が加盟する全国旅行業協会(ANTA)の会長を20年間務め、隣国との民間交流をリードしてきた。昨年のANTAの会合では韓日国交正常化50年を記念して意味のあるイベントを実施しようと呼び掛け、加盟社から全幅の支持を取り付けた。

 二階氏は自身のホームページで、「兄弟のような韓国の友人」とする朴三求(パク・サムグ)錦湖アシアナグループ会長をはじめ、朴智元(パク・チウォン)国会議員、姜東錫(カン・ドンソク)元建設交通部(省に相当、現在の国土交通部)長官、許南植(ホ・ナムシク)元釜山市長ら、韓国の友人たちとの縁を紹介している。「日本には『一度友人になれば生涯付き合う』という言葉がある。今回のソウル訪問を機に、友人たちと友情を確かめ合いたい」

 二階氏の尽力により、観光団には浜田恵造・香川県知事、久保成人・観光庁長官、北川慎介・中小企業庁長官、浜田健一郎・NHK経営委員長(ANA総合研究所会長)らも参加することになった。一般参加者の募集はANTAが担当した。「趣旨を説明すると、誰もが『本当に必要なイベントだ』と言って支援を約束した。今の日韓関係は正常ではなく、何か努力すべきだと考える人がそれだけ多いということだろう」

 今の韓日関係は史上最悪だとする評価に対しては「今よりもっと関係が良くなかった時期もあったが、民間と政府が共に努力して関係を正常化した。韓国も日本も、隣国が嫌いだからといって国をよそに移すことはできないではないか」と述べた。また「両国関係の改善は良識ある国民の常識だ」との考えも示した。

 二階氏は韓日友好のシンボルとして、金忠善(キム・チュンソン)将軍を挙げた。金忠善将軍の日本名は沙也可(さやか)で、壬辰倭乱(文禄・慶長の役)で朝鮮に渡ったものの「戦いに大義がない」として朝鮮に投降し、帰化したとされている。二階氏は2010年、日本の民間団体による和歌山県での金忠善将軍の記念碑建立に助力し、記念碑に韓日友好を願う文章も残した。同氏は「韓国の政治家に会うとよく金忠善将軍に言及する。日韓が共感できる分野を探し、理解を広げていくことが重要だ」との考えを示した。

 一方、旧日本軍の慰安婦問題を謝罪した「河野談話」と、植民地支配と侵略を謝罪した「村山談話」の見直しを求める声が自民党内で上がり、韓日関係の新たな火種となっていることについて、二階氏は「大多数の議員はそう考えていない。談話を見直すことはないだろう。政治家が争いの火種を探し、火をつけるようなことをしてはいけない」と、言葉に力を込めた。

 隣国との関係を重視する二階氏を「親韓・親中派」と非難する人もいるが、同氏は「隣国との関係を悪化させる政治家が国民の信頼を得られるだろうか。30年以上政治に携わってきたが、他人のまねをしたり、誰かの指示を受けて政治をしたりしたことはない」と、自らの歩みに自信を示した。また、韓国の中国重視政策により日本で反韓感情が強まっているとの主張に対しては「韓国の外交政策に日本が干渉する必要も理由もない。日本、韓国、中国の協力と友好は言うまでもなく皆にとって利益になる」と強調した。

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