コラム
【コラム】「幸せな人口減少論」に興じる日本
日本の安倍晋三首相は年初から「強い日本を作ろう」と力強く訴えた。「戦後の焼け野原の中から日本人は敢然と立ち上がった」「先人たちは高度経済成長を成し遂げ、日本は世界に冠たる国となった」「日本を再び世界の中心で輝く国としていく」と年頭所感で述べた。政権発足3年目を迎えた安倍首相は、円安による輸出拡大や軍事費拡大など「富国強兵」を叫んでいる。
しかし、安倍首相は日本が直面している最大の危機「人口減少」には目を閉ざしている。日本の人口は昨年、27万人が自然減少した。8年連続の減少で、戦後最大規模だが、日本政府も知識人も驚くそぶりすら見せない。日本政府がこのほど発表した「長期ビジョン」では2060年の人口目標を現在の人口よりも2700万人減の1億人と提示した。具体的な出生率目標も、これを裏付ける政策も打ち出していないが、批判の声すら聞こえてこない。
むしろ、左派も右派も「幸せな人口減少論」を展開している。「国内総生産(GDP)全体が減少しても1人当たりのGDPを維持すれば良い」「脱工業文明、持続可能な新文明を作ることができる」「人手不足はロボットやシルバー人材を活用すれば良い」…。
備えがない状態での人口減少は災難だ。人口減少は人口の構造変化を伴うため、年金・医療費を急増させる「財政地獄」、内需減少による「景気後退」、地方自治団体を維持する最少人口の崩壊による「地方都市消滅」を意味する。日本の人口が1億人を突破した1960年代末は現役世代40人で高齢者1人の年金を負担した。現在では現役世代2.5人で高齢者1人を扶養し、そのうえ予算の半分近くを国債で充当している。将来、現役世代1人で高齢者1人を扶養する時代に入れば、福祉費負担をめぐる世代間戦争、高い税金を嫌がる若者層の日本脱出も予想される。国が高齢者福祉を放棄しない限り、幸せな人口減少は幻想に終わるしかない。
それでも安倍首相は防衛費を過去最高に増やす一方で少子化に対する投資を渋っている。増田寬也元総務大臣は「1990年代から人口減少に対する懸念が出てきたが、政界は投票率が高い高齢者優先政策を実施したため、少子化の悪循環が続いている」「日本の少子化投資はGDPの1 %で、先進国の3%と比べるまでもないレベルだ」と話す。
日本はほかの先進国とは違い、移民による人口減少阻止も難しい。 70年以上日本に居住している在日韓国人までも国外に追放しようという人種差別デモが大都市のど真ん中で行われる国だ。また、フランスをはじめとするヨーロッパ各地でイスラム過激派のテロが頻発していることで「移民恐怖症」が席巻している。極右団体のデモで新たに流行しているスローガンは「移民亡国論」だ。リー・クアンユー(李光耀)元シンガポール首相が「日本のように移民を拒否すると、国が滅亡することもある」と忠告をしたこともある。安倍首相が真に強い日本を子孫に受け継がせたいなら、軍事力拡大や平和憲法の改正ではなく、人口問題で勝負をしなければならならない。