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アンジー監督作品に日本の右翼が難癖
金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党第1書記暗殺を描いた映画『ザ・インタビュー』が北朝鮮の反発に遭いながらも米国で封切られた25日のクリスマス、日本の右翼を怒らせたハリウッド映画『アンブロークン(Unbroken)』も公開された。第二次世界大戦時に日本軍の捕虜となり、3年間にわたり辛酸をなめたが劇的に生還した陸上界の元スター選手ルイス・ザンペリーニ氏(1917-2014)の実話を映画化した作品だ。
この映画はハリウッドのトップ女優アンジェリーナ・ジョリーが監督を務めるということで制作段階から話題を呼んでいたが、公開前に日本の右翼勢力が「日本を悪魔として描いている」と激しく反発、さらに注目を集めた。映画では日本軍が捕虜を棒で容赦なくたたき、拷問を日常的に行い、捕虜同士をけんかさせるなど、残虐に描かれている。映画の原作で2010年に出版された同名の自伝小説では、日本軍が捕虜の首を切るなど無残に殺害する様子や、生体実験・食人まで描かれている。
英日刊紙デイリー・テレグラフは「映画の公開を受け、日本の右翼団体はボイコットの動きと共にジョリー監督を『人種差別主義者』と非難、日本への入国拒否運動を展開している」と報じている。国際的なネット嘆願サイト「チェンジ・ドット・オーアールジー(change.org)」に上映中止を求める日本語の嘆願が掲載されると、約8500人が署名した。日本の右翼団体「史実を世界に発信する会」の茂木弘道事務局長は同紙に対し、『アンブロークン』を「信じられないほど不道徳な映画」と非難した。
しかし、このような反発に対する海外メディアの反応は『ザ・インタビュー』に対するものと同様に冷ややかだ。米日刊紙「USAトゥデイ」は「そうした反発は気にしない。美しいメッセージが込められた映画」というジョリー監督の言葉を報じ、「日本の右翼たちは歴史をロンダリング(洗浄)しようと必死にあがいている」と指摘した。「チェンジ・ドット・オーアールジー」では「映画の普及阻止を狙う日本側の試みを阻もう」と英語の「逆嘆願」の受付が開始され、1週間で約1000人が署名した。
ザンペリーニ氏は1998年の長野冬季五輪に聖火ランナーとして参加した際、自身を拷問した旧日本軍兵士だった渡辺睦裕氏(1918-2003)に和解のため面会を求めたが、渡辺氏は拒絶した。渡辺氏は当時、米CBSのドキュメンタリー番組『60 Minutes』とのインタビューで、残虐行為の事実は認めながらも「捕虜を日本の敵と考え、厳しく接した」として謝罪は拒否した。
渡辺氏役の俳優が韓国系の父を持つ日本の人気ロック歌手MIYAVI(本名:石原貴雅)=33=だということも話題だ。音楽の実力と共にビジュアルも映えるため韓国にもファンが多く、何度も来韓公演しており、韓国系であることを公にしている。
「日本の人気歌手が残忍な日本軍兵士を演じることを、多くの日本人は芳しく思わないのでは」という海外メディアの見方について、MIYAVIは時事週刊誌「タイム」のインタビューで「ザンペリーニ氏は五輪聖火リレーで日本に対し許しのメッセージを伝えた。それに感銘を受けて出演を決心した。ジョリー監督と相談して残忍さの裏側に弱さも持つ多面的な人物を描こうと思った」と語った。
日本の主なメディアはこの映画についてほとんど言及していない。産経新聞が「映画のテーマは『許し』だという。だが、ザンペリーニ氏がどう許していったのかがいまひとつ伝わってこなかった」と評したほかは、いくつかのニュースサイトが外信を短く伝えただけだ。韓国では来月8日に公開が予定されている。日本では公開予定がまだない。