▲19日午後、ソウル地下鉄明洞駅4番出口前にある換気口。鉄製のふた(グレーチング)の上にオートバイが止まっており、通行人も上を歩いている=写真左=。同日午後、光州広域市地下鉄トルゴゲ駅出口前にある換気口には、高さ1メートルのフェンスが設けられている。写真=李泰景(イ・テギョン)記者、キム・ヨングン記者

 「そこにいたら危ないですよ。降りてください!」

 19日午後3時5分ごろ、ソウル地下鉄4号線明洞駅9番出口前で、観光ガイドが驚いた様子で慌てて叫んだ。その直前、中国人女性観光客8人が地下鉄換気口のふた(グレーチング)に載っていたのだ。観光客たちはスカートを手で押さえ、米国人女優マリリン・モンローのまねをして写真を撮ろうと、鉄製のふたに登ったり降りたりしていた。換気口のふたが周りのコンクリートにぶつかり、「バン、バン」と音がしていたためガイドが仰天したのだった。

 明洞駅周辺に四つある換気口は全て高さが20センチほどしかなかった。明洞駅4番出口前の換気口は、午後2時50分からのわずか10分間で230人が通っていった。同じ10分間にこの道を通った250人のほとんどが換気口の上を歩いていったということだ。同2時45分には一度に42人が幅2メートル・長さ30メートルの換気口の上を歩いていった。45歳の男性は「換気口が崩れて人が死んだというニュースを見たが、換気口は歩道の大部分を占めており、避けて通ることはできない」と話した。

 16人の命を奪った板橋テクノバレーの換気口崩壊・転落事故は、換気口がいつでも「死の絶壁」に変貌する可能性を示している。だが、ソウル市内には地下鉄の換気口を避けて通るのが難しい歩道があちこちにある。高さも歩道とほぼ同じで、フェンスも危険を知らせる警告文もない。歩いてもいいのか、自己判断で避けて通れというのか、一般の通行人たちが混乱するのも仕方ない。通行人が多い都会では、イベントやデモのときに地下鉄換気口の上に数十人が立っている姿を見ることもある。

 ソウル市によると、ソウル市内の地下鉄換気口のふたは、歩行者が上に載ることを想定して作られているという。ソウル市の道路・鉄道設計基準は1平方メートル当たり最低350-500キログラムに耐えられるようにグレーチングを製造するよう規定している。少なくとも規定上は、一般の歩道橋(1平方メートル当たり350キログラム)よりも強度があることになる。

 問題は、地下鉄の換気口でない、一般の地下換気口も同じだと思って今回のように致命的な結果が生じる可能性があるという点だ。一般の建物に設置されている地下換気口は地下鉄の換気口とは違い安全規定がない。グレーチングをどれだけ丈夫なものにするのかを定めた規定どころか、グレーチングを設置する必要があるかどうかさえも規定されていないのだ。江南大学のキム・グンヨン都市工学科教授は「歩道と高さが同じ換気口もあるし、膝くらいの高さのもの、2メートルくらいの高さのものもある。フェンスを設置したり、警告文を掲げたりしなければならないという規定もないのが実情」と言った。国土交通部(省に相当)関係者は「一般の換気口は一度に人がたくさん登って飛び跳ねることを想定していないため、別途に規定はない」と話している。

 地下鉄の換気口と一般の換気口の区別が容易でない通行人としては、政府のこうした説明は無責任以外の何物でもない。昨年9月には京畿道富川市で花壇の掃除をしていた50代男性が換気口の上に落ちていたたばこの吸い殻を拾おうとして18メートル下に転落、死亡するなどの事故が相次いだ。このように危険な換気口が韓国の各地に幾つあるのか、政府は把握すらできずにいる。国土交通部関係者は「それは全国にトイレが幾つかあるのかを把握できないのと同じ」と言った。ソウル市の場合も、同市が把握しているのは地下鉄換気口の2418カ所、公営地下駐車場の換気口110カ所、電気・通信・上水道が通る区間の換気口252カ所の合計2780カ所だけだ。ソウル市関係者は「マンションや商業ビルなどの建物のうち、延べ面積2000平方メートル以上の地下施設がある所は全て換気口の設置が義務付けられているが、数までは把握できていない」と認めた。

 国土交通部関係者は「明確な規定はないが、換気口を建物の屋根だと考えると、グレーチングの荷重基準は一般的な屋根と同じ1平方メートル当たり100キログラムと解釈できる。今回の板橋テクノバレーでの転落事故でも、警察の捜査の結果、崩れた換気口のふたの設計荷重がこれより小さければ、建築法に基づき司法処理することもできる」と主張した。しかし、構造工学の専門家は「その言葉が正しいとすれば、換気口のふたを設計するとき、雪を想定した『雪荷重』、風を想定した『風荷重』、地震を想定した『地震荷重』なども考慮しなければならない。だが、換気口のふたを施工する際、そうしたことまで考える構造技術士がいるという話は聞いたことがない」と語った。これまでの換気口転落事故の裁判では、裁判所もほとんどが管理者の管理責任を問うただけだ。

 公州大学のチョン・サンマン建設環境工学部教授は「海外ではほとんどの換気口が高さ2メートル以上で、物理的に人が登れないようになっている。韓国も換気口を高くして、転落事故の危険性があるとの警告を取り付けるなど、安全規制や対策を講じるべきだ」と話している。

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