死亡者16人、負傷者11人という惨事となった情報技術(IT)産業研究団地「板橋テクノバレー」(京畿道城南市)の換気口崩落事故は、主催者側の無責任な安全対策と現場管理に観客の安全意識の低さが重なった人災だったことが明らかになった。しかも、事故時に開催されていた「板橋テクノバレーフェスティバル」のライブ会場には保安要員が一人もいなかったことが分かった。

 京畿警察庁捜査本部は19日の記者会見で「会場にはイベント要員38人が配置されていたが、イベント計画書に保安要員と指定されていた4人は自分の業務を知らず、事前教育もなかったことが分かった。事実、保安要員業務を遂行した人員は一人もいなかった」と述べた。

 警察によると、このイベントを主催した報道メディア「edaily」のスタッフ11人、edailyとイベント運営契約を結んだ「プランボックス」のスタッフ11人がステージ周辺に配置され、イベントを進行・サポートしたという。京畿科学技術振興院の板橋テクノバレー運営本部職員16人も広報ブースで企業PR活動をしていた。

 京畿科学技術振興院の運営企画チーム課長(37)が作成したイベント計画書には、スタッフ4人が保安要員として記載されていた。しかし、警察の調べでは、4人は自分たちが保安要員となっていることを知らなかったという。この課長は18日未明に警察の事情聴取を受け、午前7時ごろに勤務先の板橋運営本部10階の上から飛び降りて死亡した。この課長は飛び降りる直前、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の自身のアカウントに「事故で亡くなった方々に申し訳ない。誠意を分かってくだされば」と書き残したが、警察の捜査過程に関する言及はなかった。

 警察はedaily・京畿科学技術振興院・プランボックス本社のほか、これら企業・機関の責任者・実務者に対し家宅捜索を実施する一方、関係者6人に対し出国禁止措置を取った。また、崩れた換気口の設計・施工にミスはなかったか、建物所有者の管理が適正だったかどうかについても調べている。

 さらに、今回のイベントを主催したedailyは事故に備える保険に入っていないことも分かった。しかし、同社のクァク・チェソン会長は城南市盆唐区に設けられた対策本部を訪れて謝罪、「イベント主管会社として責任を取るべきことがあれば取る。それとは別に、個人所有の奨学財団を通じ犠牲者の皆さんのお子さんたちに対し、大学までの学費を負担したい」と述べた。

 19日には事故で犠牲となった29歳男性の葬儀が行われ、ほかの犠牲者の遺族たちも今後、葬儀などを行う予定だ。遺族たちは「旅客船『セウォル号』沈没事故(後の遺族が補償をめぐりもめている騒動)もあるのに、また問題化するようなことがあってはならない」という声が多く、合同焼香所は設けないことになった。

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