17日夕に京畿道城南市の板橋テクノバレーでの野外公演中に起きた換気口の崩落事故は、野外公演場に対する安全規定の未整備、換気口設置に関する安全規定の不在、主催者のずさんな安全管理、観客の「安全不感症」などの原因が重なって発生した典型的な人災だ、と専門家らは分析している。

 同日、板橋テクノバレーで行われたイベントは、現行の法規上は安全管理対象に該当しない「野外スペース」で開催された。文化体育観光部(省に相当)は、2008年に国立劇場で施設の見学中だった学生が回転ステージの下に転落する事故が発生したのを機に、公演安全マニュアルを策定した。だが野外公演場はこのマニュアルの適用対象ではない。

 文化体育観光部の関係者は「今回の事故の場合、公演場(施設物)には当たらず、事実上は野外スペースに近い」として「野外コンサートの場合は該当の法や安全規定の適用対象にはならない」と説明した。本紙の取材によると、イベントを主催したedailyは当局にコンサートに関する許可申請をしたが、盆唐区庁は文化体育観光部のマニュアルに従い「一般の広場は許可の対象ではなく、区庁には許可する権限がない」として申請を受け付けなかった。最終的に主催者側は許可を受けていない状態で今回のイベントを実施した。

 3000人以上の来場が予想される地域のイベントについては消防防災庁の「地域祝祭場安全管理マニュアル」が適用され、安全行政部長官・消防防災庁長による安全管理指導が必要となる。昨年4月と9月に同じ場所で行われたイベントには3000人以上が来場し、今回のコンサートも同規模の来場者が予想されていた。だが現場では、換気口のふたの上に上らないよう制止する警備員はおらず、立ち入りを規制するフェンスも設置されていなかった。安全対策としては、15日に主催者が盆唐消防署、盆唐区庁、盆唐警察署と共に安全教育を実施した程度だった。

 事故の原因となった換気口についても、どのような基準に従ってどのくらいの重さに耐えられるよう設計するのかなどの規定はない。

 国土交通部の関係者は「一般的に換気口は、建築法で定められた規定に準じてある程度の荷重に耐えられるような強度で設置されるが、明確な基準や耐荷重量を定めた規定はない」と説明した。換気口の設置方法がずさんでも法的には何の問題もないというわけだ。このため換気口を設置した企業などに過失責任を問うことはできない可能性が高い。

 専門家たちも、安全規定の対象となっていない構造物が市民の安全を脅かしていると指摘する。建国大建築学科のアン・ヒョンジュン教授は「初めから人が上に上がれないように設計するとか、周辺にフェンスを設置して接近できないようにすべきだった。安全基準を余裕でクリアできるように構造物を設計するのが、こうした大規模事故を防ぐ近道だ」と指摘した。

 主催者側の安易な安全対策も問題だった。コンサート中には司会者が、換気口に上がっていた観客に対し「下りてください」と何度も注意を呼び掛けていたが、換気口上の観客を引っ張り下ろしたり制止したりする警備員はいなかった、と現場にいた人たちは話した。

 東園科学技術大消防安全管理学科のチョン・ソンギュン教授は「コンサート会場は完全に開放された空間だった上、金曜午後の退勤時間帯に無料で開催するということで、どれほどの観客が押し寄せるのか主催者側も正確な予測が難しい状況だった。今回のように観客が殺到する場合は、仮設物や換気口など、人が上がることが予想される場所には規制用フェンスを設置して接近できないようにすべき」と指摘した。

 一方、韓国人の「安全不感症」を指摘する声もある。旅客船「セウォル号」沈没事故、京畿道高陽市の高陽総合バスターミナル火災、全羅南道長城郡の療養型病院火災など、大規模事故のニュースに相次いで接したにもかかわらず、韓国人の安全に対する意識は依然として低いというわけだ。

 慶北大建築学部・都市環境設備研究室のホン・ウォンファ教授は「さまざまな原因があると思うが、結局は安全というのは自分自身で守らなければならないもの。20人以上が上がれば壊れる恐れもあると判断して下りるべきだったのに、何も考えずに危険な行動を取ったのが問題だ。多くの人が集まる場所では常に緊張感を持ち、事故に遭わないよう国民一人一人が努力すべき」と指摘した。

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