国際総合
安倍構想と衝突する中国の「真珠の首飾り」戦略
中国の習近平国家主席が東南アジアやインド洋の主要港を1カ所ずつつなぐ「真珠の首飾り戦略」に拍車をかけている。エネルギー・貿易の拠点港を確保し、欧州やアフリカへの制海権を掌握しようというものだ。習主席は15日、中国の最高指導者としては42年ぶりにインド洋の島国モルディブを訪れ、16日には28年ぶりにスリランカを訪れた。インド洋の要衝であるモルディブとスリランカの港に中国資本や技術を投入するためだ。
中国はスリランカの首都コロンボ港の新都市で3分の1を担当・開発する予定だ。コロンボ港の大型コンテナ埠頭(ふとう)建設にも5億ドル(約536億円)を投入する。モルディブのアブドラ・ヤミーン大統領は、「真珠の首飾り戦略」を含む習主席の「21世紀海洋シルクロード」構想について「積極的に支持する」と表明した。
中国は600年前の明代の武将・鄭和の南海遠征を頂点に、南シナ海-インド洋-アフリカに至る海路を切り開いた。しかし、北方の遊牧民や倭寇に対処しようと、貿易商が海に出ることを禁止する「海禁政策」を実施、制海権を失い始めた。このため、アジアの覇権は海を掌握した日本に移った。
習主席は昨年10月、インドネシアで「21世紀新海上シルクロード建設」を提案、過去の栄光を再び取り戻そうと立ち上がった。中国が目指す「真珠(拠点港)」はインド洋からヨーロッパ・アフリカへとつながっている。李克強首相は今年6月にギリシャを訪れ、46億ドル(約4930億円)規模の貿易・投資協定を結び、ピレウス港の運営権を確保した。地中海を通じてヨーロッパに行く拠点を開拓したのだ。中国は600年前に鄭和艦隊が到着したケニアのモンバサ港にも目をつけている。
しかし、習主席の「真珠の首飾り戦略」は、安倍首相が推進する「安保ダイヤモンド構想」との衝突が避けられないとの見方がある。
安倍首相は2012年12月、中国をけん制する日本・ハワイ(米国)・オーストラリア・インドが連携してダイヤモンド隊列を組むべきだと提案した。習主席のモルディブ・スリランカ・インド歴訪より前に、安倍首相はスリランカとバングラデシュを訪れ、インドのモディ首相を東京に招待したのは「安保ダイヤモンド構想」を強化するための布石である。
インドの日刊英字紙ザ・タイムズ・オブ・インディアは「インドも中国の戦略に対抗して『モンスーン航路構想』を用意している」と16日、報道した。インドを中心に西はアラビア半島と東アフリカ、東は東南アジア諸国との結束を強化して安定した航路を確保するというものだ。インドは1500年前にモンスーンを利用したインド洋航路を開拓した。