福島第一原子力発電所事故が発生してから3年5カ月がたつ今、日本社会でも「福島」という単語が次第に忘れられてきている。だが朝日新聞の紙面では、依然として現在進行形だ。重要な記事を掲載する「総合3面」に、原発事故について扱う「プロメテウスの罠(わな)」というタイトルの連載記事が毎日掲載されている。2011年10月3日に始まったこの連載は、今月7日で1001回目となった。

 朝日新聞は、戦後日本最大の災害である原発事故の実態を明らかにし、教訓を十分に伝えていくとして、この連載を始めた。同紙は「知られていない事実を探し出し」「論評ではなく事実を伝える」という原則を掲げた。まるで記者たちが福島第一原発周辺の汚染地域に住んでいるかのように、徹底的に現場中心の報道を行ってきた。また首相官邸や東京電力、地域住民の視点で多様な角度から事故の検証を行ってきた。

 これによって多くの成果も得た。日本政府が緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)の情報を隠蔽(いんぺい)し、すでに放射性物質に汚染された地域に住民たちが避難する状況を放置していたことを突き止めた。また最近は、福島第一原発の所長だった吉田昌郎氏(故人)の証言記録を特ダネとして報じ、事故当時、現場の職員たちの多くが恐怖のあまり、無断で現場を離れていたことを明らかにした。

 日本政府や国会、民間の調査委員会は、事故についての最終報告書を提出したが、朝日新聞の検証報道は最も分かりやすく立体的だと評価されている。2012年度には日本新聞協会賞を受賞し、連載された記事はすでに7冊の本(計1900ページ)にまとめられて出版されている。

 朝日新聞の関係者は「原発事故によって故郷を奪われた住民たちが置かれている現実を考えれば、事故が収拾されたなどとは考えられない。今後も取材と報道を続けていく」と語った。原発の早期再稼働を推進する安倍晋三首相にとって、原発の問題点を追及し続ける朝日新聞の報道は目障りで仕方ないだろう。しかし、極右派から「反日的」と攻撃されながらも、数十年にわたって旧日本軍の慰安婦問題の真実を伝え「日本の良心」と評されている朝日新聞の根気と執念は、原発事故をめぐる報道でもそのまま表れている。

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