コラム
【コラム】なぜ中国サッカーは弱いのか
外国人が中国人に「一番好きなスポーツは?」と尋ねると「卓球」と答えるケースが多い。しかし何度も尋ねると「本当はサッカー」と言葉を濁す。つまり「本当はサッカーが好きだが、中国代表の成績を考えると恥ずかしくなるので、(中国が世界で一番強い)卓球と答える」というのだ。習近平国家主席は自らを「球迷(情熱的なサッカーファンの意)」と自負する。先月初めにメキシコを訪問したときは、2002年のサッカー・ワールドカップ(W杯)で中国代表を率いたミルチノビッチ元監督(ユーゴスラビア)がメキシコ代表監督(1986年W杯)を務めていた当時のエピソードに言及した。習主席のスローガンは「中国の夢」だが、これにはサッカーW杯の優勝も含まれているといわれている。
ところが中国サッカーは「情熱的なサッカーファン」を自負する習近平政権発足直後から悲惨な現実に直面している。先月15日には格下と考えていたタイに1-5で惨敗した。しかもこの試合に出場したタイ代表は23歳以下のチームだったという。この惨敗もあって中国代表監督だったスペイン人のカマーチョ氏(58)は電撃的に解任されたが、これはサッカー界ではなく中国の政治指導部が「激怒」したからといううわさもある。カマーチョ氏は2002年のW杯でスペイン代表を率い、韓国とも対戦したことのある経験豊富な指導者だが、中国サッカーの体質を変えることはできなかった。
中国人は自国の代表チームが弱い理由についてさまざまな分析をしている。例えば「賭博が好きなので、八百長ばかりやっているから強くならない」「中国人は個人主義の考え方が強いので、チームワークが重要なサッカーはもともと中国人に合わない」「高額の報酬を得る代表選手になると、それ以上は努力しなくなる」などだ。米紙ニューヨーク・タイムズは2010年「共産党はサッカーが『草の根スポーツ』となり底辺が拡大するのを望んでいない。そのため中国のサッカーは弱い」とする分析を掲載したことがある。地域でサッカークラブが活発に活動すると、自然に人が集まるようになるが、これは共産党の中央集権体制にとって望ましいことではないということらしい。実際に中国では人が20-30人集まるだけで警察の監視対象になる。
2002年のW杯で韓国代表監督を務めたヒディンク氏が、W杯を前に選手と取材記者に何度も強調していた言葉がある。それは「クリエーティブ(創造的)なプレー」だ。かつての指導者や先輩などが一方的に指導してきたプレーの殻を破り、選手自らがピッチで考えて存分にプレーすることを求めるものだった。ヒディンク氏が欧州に戻る際に朴智星(パク・チソン)と李栄杓(イ・ヨンピョ)を連れていったのは、彼らのクリエーティブなプレーを高く評価したからだろう。
最近このクリエーティブを意味する「創造」という言葉は、韓国はもちろん中国でもよく話題に上る。中国の新しい指導部は少しばかり成長率を犠牲にしてでも、経済の構造改革を押し進める考えを持っているが、この過程で「創造」と「革新」を何度も強調するようになった。安い労働力でハイテク製品を模倣し、これを輸出するという成長のやり方はすでに限界に到達したと判断したからだ。問題は中国の政治、経済、社会、ひいてはサッカーに至るまで、今なお共産党による統制を受けているという点だ。これでは創造と革新がその威力を発揮する機会は少なくならざるを得ない。中国経済やサッカーが今後も発展を続けるには、中央による統制を少し弱める必要があることは、中国の政治指導者たちも理解している。しかし「混乱」に対する歴史的なトラウマがあるためか、統制を弱めることができないのが中国のジレンマだ。