チャンネル登録者数900万人を誇る韓国の大食い系ユーチューバーTzuyang(ツヤン)さんが、フィリピン人女性のものまねをする女性お笑いタレントと一緒に動画を配信したところ、「人種差別だ」という論争に巻き込まれた。
ツヤンさんのユーチューブチャンネルには5日、「人種差別動画を削除して謝罪せよ」というネットユーザーからのコメントが相次いでいる。
問題となった動画は先月30日に投稿されたベトナム料理店での動画配信で、ツヤンさんは配信で「視聴者と一緒に食べようと思います。フィリピンから韓国に嫁いだフィリピン人の方を招待しました」として、ニトンと名乗るゲストと一緒に料理を食べた。
ニトンはたどたどしい口調で「こんにちは、笑顔が美しいニトンです」「もともとは農家の嫁でしたが、今はお笑いタレント」とあいさつした。
動画には「フィリピンと大韓民国のすごいコラボ」という字幕も付いていた。
配信中ずっとフィリピン出身の女性であるかのように振る舞っていた「ニトン」とは、韓国人お笑いタレントのキム・ジヨンさん。キムさんはKBS第2のバラエティー番組『ギャグコンサート』のあるコーナーで、外国人花嫁のニトンというキャラクターに扮(ふん)している。
こうした事実が知られると、インターネットでは、ニトンというキャラクターをめぐって「人種差別」だとの批判が提起された。ネットユーザーらは「典型的な人種差別ネタだ」「フィリピン人でもないお笑いタレントがフィリピン人のふりをして、結婚するために韓国にやってきたと話し、つたない口調で固定観念を植え付けている。これのどこがお笑いなのか」「韓国人は他国に行って人種差別を受けたと主張するくせに、こういうことは人種差別だと思っていない」などの反応を見せた。
さらに、一緒に配信したツヤンさんに対しても「動画を削除して謝罪してほしい」「人種差別ということを認識できずに配信していたのか。グローバルなファンも多いのに軽率だ」などの批判が相次いだ。
自身をフィリピン人だと明かしたネットユーザーも「フィリピン人として笑えないもので、不快だ」「私たちはあんな口調で話さないし、わざと黒く塗ったような肌で出演したのも不快」「ツヤンの動画は好きだけど、今回の動画はフィリピン人として笑えない」などの反応を見せた。
外国人を笑いものにしたキャラクターがコメディーの素材として登場したのは今回が初めてではない。
1980年代には顔を黒く塗って黒人に扮したシコモンズ、2000年代に外国人労働者というコンセプトで「社長が悪い」という流行語を生みだしたブランカなどがいた。昨年にはたどたどしい韓国語で話す「タナカさん」というキャラクターがユーチューブで人気を集めた。お笑いタレントのキム・ギョンウクさんが「日本のホストクラブ出身の男性」というコンセプトで生み出したキャラクターだ。この「タナカさん」をめぐり、日本人を笑いものにしているという指摘も一部にはあり、「時代錯誤的なお笑いだ」との批判も出た。
ただし、人種差別をめぐるこのような論争が消耗的だとの意見もある。「お笑いはお笑いとして受け止めるべき」という声も聞こえている。
文化評論家のファン・ジンミ氏は「フィリピン人たちの『不愉快だ』という意見は受け止める必要がある」としながらも「韓国で迫害や差別を受けるキャラクターではなく、韓国社会の一員として生きているキャラクターなら、その部分に注目して見るべき」と指摘した。
キム・ジャア記者