ソウル市冠岳区のソウル大学中央図書館には「習近平寄贈図書資料室」がある。2014年に習近平主席がソウル大学を訪問した後に寄贈した図書など、およそ1万5000冊が保管されている。だが最近になって、一部のソウル大学教授の間では、この資料室をソウル大学に置き続けてよいのかをめぐり論争が起きている。人権問題で国際社会の制裁や非難を浴びている習主席の名を冠した資料室がソウル大学にあることが、果たして正しいのかというわけだ。しかも、ソウル大学で国家元首の名を冠した資料室はこの資料室が唯一。逆に、「(撤去することで)いたずらに中国を刺激する必要があるのか」という反論も出ている。
習近平寄贈図書資料室(以下『資料室』)は、2014年にソウル大学で講演を行った習主席が1万52冊の中国関連図書や映像資料などを寄贈し、2015年にオープンした。「韓中学術交流と学術研究活性化の基盤を整えよう」という目的だった。図書館2階にある106.9平方メートル(32坪)規模の資料室には、寄贈図書だけでなく習主席の写真、習主席夫妻がソウル大学訪問時に座っていた椅子、講演映像などがある。
だがソウル大学が、資料室のある中央図書館を2025年までに改築すると決め、今年から本格的に推進し始めたのに伴い、資料室の存置をめぐる論争が繰り広げられている。「資料室をなくすべきだ」と問題提起している教授らは、人権問題を挙げる。習近平主席が香港国家保安法制定、新疆ウイグル自治区人権弾圧などで国際社会の制裁と非難を受けている状況を考慮すべき-というわけだ。また、今のケイ海明・駐韓中国大使を含め、新たに発令を受けた中国大使が相次いでこの資料室を必須の訪問コースのように訪れていることも論争をあおっている。ある教授は匿名で「既に習近平主席の国政運営に対する本など、習主席を称賛する性格の資料が多数あり、中国はここを宣伝に活用しているようだ」とし、「習主席が訪問した2014年とは異なり、各種の人権弾圧問題が浮上している今、ソウル大学は考えを変えるべきではないか」と語った。
だがソウル大学本部内では「外交問題に飛び火しかねない」という懸念も大きい。また中国関連の研究を行っている教授らの間からは、引き続き存置すべきという反論も出ている。鄭鍾昊(チョン・ジョンホ)ソウル大学国際大学院教授は「習主席のソウル大学での演説は、中国の指導者が韓国で行った初の大衆演説として重要な意味がある」とし、「中国学関連研究に重要な資料がある場所なので、いろいろな点を考慮して『中国資料室』『韓中関係資料室』に拡大改編するのもいいだろう」と語った。
カン・ダウン記者